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プリント配線板の性能を大きく左右する絶縁材料福田昭のデバイス通信(260) 2019年度版実装技術ロードマップ(68)(2/2 ページ)

» 2020年07月31日 09時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]
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配線は銅、絶縁材料は多種多様

 プリント配線板は基本的に、配線と絶縁材料(絶縁基材)で構成される。配線の材料にはごく一部の特殊な配線板を除き、銅(Cu)が使われる。これに対して絶縁基材は多種多様である。絶縁材料の特性が、プリント配線板の仕様を大きく左右する。

プリント配線板の絶縁基材。出典:JEITAおよびJPCA(クリックで拡大)

 絶縁基材も、従来の一般的な材料と新規の材料に分かれる。従来の絶縁基材で最も一般的なのは、リジッド配線板に使われる「FR-4」だろう。FR-4というのは米国規格協会(ANSI:American National Standard Institute)の規格名で、ガラスエポキシ樹脂の基材を示す記号の1つだ。ガラスエポキシ樹脂とは、ガラス繊維を布状に編んだ「ガラス織布」にエポキシ樹脂を含浸させたもの。一般的な耐熱性を備えた基材が「FR-4」、高い耐熱性を備えた基材が「FR-5」と区分けされている。

 リジッド配線板に古くから使われてきた絶縁基材には「紙フェノール樹脂」がある。紙の基材にフェノール樹脂を含浸させた材料であり、製造コストが非常に低いという特徴を備える。ANSIの規格名称は、一般的な絶縁抵抗を備える「FR-1」と、高い絶縁抵抗を備える「FR-2」に分かれる。製造コストは低いものの、両面基板や多層基板などは製造しにくい。片面プリント配線板に主に使われる。配線板は「紙フェノール配線板」あるいは「紙フェノール基板」と呼ばれることが多い。

 フレキシブル配線板で主に使われてきた絶縁基材は「ポリイミド」だろう。ポリイミドのフィルムは高い耐熱性と難燃性を備えている。耐熱性は400℃に達する。難点は材料コストが高いこと。このため、廉価版としてポリエステル(PET:Polyethylene Terephthalate)を絶縁基材とするフレキシブル配線板が商品化されている。もちろん弱点があり、PETは耐熱性が低い。通常のはんだを使えないほど低い耐熱性であり、はんだ付けには融点の低い低温はんだを使う。

 パッケージ基板(サブストレート)の代表的な絶縁基材は「BT樹脂」(BTはビスマレイミド・トリアジン(Bismaleimide-Triazine)の略称)だろう。三菱ガス化学が1976年に開発した高耐熱樹脂で、1985年にパッケージ基板に採用された。それまでパッケージ基板の標準的な絶縁基材だったセラミック(アルミナ)に近い性能を有していたことから、1990年代にはセラミックを置き換えることで急速に普及した。普及の原動力は2つあった。1つはセラミックよりも安価なこと。もう1つは当時、基板レスのプラスチックQFPが多ピン化の限界に来ており、代わってアレイタイプのプラスチックBGAパッケージが登場したことである。このBGAの基板としてBT樹脂のプリント配線板が標準的に採用されたことが、普及を促した。

新世代のプリント配線板が採用した新しい絶縁基材

 新世代のプリント配線板である「機能集積基板(機能集積配線板)」では、従来のプリント配線板と同じ材料のほか、これまでに使われなかった絶縁基材が導入されている。代表的な材料は、再配線層の絶縁材料である。BCB(Benzocyclobutene、ベンゾシクロベテン)、フェノールノボラック(Phenol Novolak)、メソポーラスシリカ(Mesoporous Silica、規則的に配列した細い孔を内蔵する二酸化珪素)などがある。

 同じく新世代のプリント配線板「新製造基盤」でも従来とは違った絶縁材料を使う。プリンタブル配線板では、ポリカーボネート(Polycarbonate)、PET、セルロース(Cellulose)が試みられている。ストレッチャブル配線板では、熱可塑性ポリウレタン(TPU:Thermoplastic Polyurethane)やジメチルポリシロキサン(PDMS:Dimethylpolysiloxane)などが使われる。またテキスタイル配線板では、絶縁基材は布地や不織布、織物などである。

次回に続く

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