新手法の酸化膜形成でSiC-MOSFETの性能が10倍に : 30年来の課題に光明 (4/4 ページ)
界面欠陥が10分の1に低減したことによる具体的な効果としては、600V〜1200VクラスのSiC-MOSFETにおいて、オン抵抗が数分の1になる。つまり、同じ定格電流を数分の1(2分の1、3分の1)のチップサイズで達成できるようになるので、コストが数分の1になる。「SiCパワーデバイスではコストが高いというのが課題の一つなので、これを従来の2分の1、3分の1にできるということだ」(木本氏)
その他、チャネル長を数倍、ゲート酸化膜を数倍にしてもオン抵抗が同等レベルに抑えられるので、信頼性の向上につながる。
界面欠陥が10分の1に低減したことによる効果 出典:京都大学/東京工業大学(クリックで拡大)
新手法は、特殊な装置や高価な原材料は一切要らないので、導入もしやすい。猛毒のNOガスを使わずに済むのも利点だ。「製法の障壁は特にないと考えている。大面積のウエハーにSiを均一に堆積させる必要はあるが、(主流の)6インチSiCウエハーや、あるいは300mmSiCウエハーでも問題ないのではないか。タクトタイムについても、百数十枚のウエハーをバッチ処理できるのであまり心配はしていない」(木本氏)
現時点では、この新手法を実際に採用してSiC-MOSFETを量産する具体的な計画はまだないが、「採用してくれるメーカーがあれば、1〜2年で量産を実現できるのではないか」と木本氏は見ている。
実は、「SiCウエハー上にSiを堆積して酸化する」方法は、以前に米国で考案され、プロセス技術として特許も取得されているという。木本氏は「ただ、その手法では、750℃ではなく900℃で酸化させている。従ってSiCの表面も酸化してしまい、うまくいかなかったようで、同手法は実際の量産に採用されていないようだ」と語る。木本氏らは、今回提案した新しい手法を、構造特許として出願済みだ。
新デバイス構造でSiC MOSFETの信頼性を向上
東芝デバイス&ストレージは、SiC MOSFETの内部にSBDを搭載する新たなデバイス構造を開発した。従来技術に比べて、オン抵抗の上昇を抑えつつSiC MOSFETの信頼性を10倍以上も高めることが可能だという。
パワー半導体市場、2030年に4兆円超の規模へ
富士経済は、世界のパワー半導体市場を調査し、2030年までの市場予測を発表した。これによると、2019年の2兆9141億円に対し、2030年は4兆2652億円に達すると予測した。
パワー半導体世界市場、2025年に243億5100万ドルに
矢野経済研究所は2020年7月27日、パワー半導体の世界市場予測を発表した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でパワー半導体の世界市場は2020年にマイナス成長を見せるものの、2021年に一部分野から回復基調に転じ、2025年には243億5100万米ドルにまで成長すると予測している。
SiCはウエハー品質が課題、GaNは統合がトレンドに
パワーエレクトロニクスは、GaN(窒化ガリウム)とSiC(炭化ケイ素)の採用によって、興味深い道を歩んできた。フランスの市場調査会社であるYole Developpement(以下、Yole)は、これらのワイドバンドギャップ材料の概観を発表した。
バーチャルブースで第4世代SiC-MOSFETなど展示
ロームは、オンライン開催となったパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Europe digital days 2020」(2020年7月7〜8日、ドイツ時間)に出展。バーチャルブースを用意し、第4世代SiC-MOSFETなどの製品を紹介していた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.