東芝デバイス&ストレージは、SiC MOSFETの内部にSBDを搭載する新たなデバイス構造を開発した。従来技術に比べて、オン抵抗の上昇を抑えつつSiC MOSFETの信頼性を10倍以上も高めることが可能だという。
東芝デバイス&ストレージは2020年7月、SiC(炭化ケイ素) MOSFETの内部にSBD(ショットキーバリアダイオード)を搭載する新たなデバイス構造を開発したと発表した。従来技術に比べて、オン抵抗の上昇を抑えつつSiC MOSFETの信頼性を10倍以上も高めることが可能だという。
SiC MOSFETは、シリコンベースのパワーデバイスに比べ高耐圧で低損失といった特長を持ち、鉄道向けインバーターシステムなどで搭載が進む。太陽光発電や電源制御などの用途でも需要拡大が期待されている。ただ、SiC MOSFETのドレイン‐ソース間にあるPNダイオードに通電すると、SiC結晶中の欠陥が拡張してオン抵抗が変動する、という課題もあった。
そこで同社は、PNダイオードに並列して、オン抵抗が小さいSBDを配置する新たな構造を開発した。これによって、PNダイオードへの通電を抑え、結晶欠陥の拡張を防ぐことができるという。新構造を採用した耐圧1200VのSiC MOSFETは、2020年8月下旬から量産を始める予定である。
SiC MOSFETにSBDを搭載したデバイス自体は既に実用化されている。ところが、オン抵抗が大きくなるため、実用レベルでは3.3kVなど高耐圧の製品に限られていたという。新たに開発したデバイス構造は、MOSFETとSBDの領域についてその比率を最適化することで、オン抵抗の上昇を抑えた。
実験では、ソースからドレインへ電流密度250A/cm2で1000時間通電した。通電後にオン抵抗を測定したところ、従来構造のMOSFETではオン抵抗が最大42%も変動した。これに対し新構造のMOSFETは、最大3%の変動に抑えることができたという。
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