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光トランシーバーForm Factorの新動向(1) 〜“Beyond 400G”の議論が活発に光伝送技術を知る(12) 光トランシーバー徹底解説(6)(1/4 ページ)

今回は、“Beyond 400G”に向けた議論とともに、Pluggableにおける3つの問題点を紹介する。

» 2020年08月27日 11時30分 公開
[高井厚志EE Times Japan]

“Beyond 400G”に向けた議論が活発に

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 光トランシーバーのForm Factorの舵きりの時期が来たのではないだろうか。

 SFP+が主役になってから10年以上がたち、400Gが離陸しつつある。そこで、“Beyond 400G”という話題をさまざまなカンファレンスやウェビナーなどで目にするようになった。その議論は51.2Tと102.4Tのデータセンター向け大容量スイッチ(パケット交換システム)をにらんだ世界を対象としている。

 その中で次世代光インタフェースのForm Factorに関する議論が起こっている。特に現在主流のFront Panel Pluggableから新しい搭載方式に移行するかどうかの論争が活発だ。ハイパースケーラーやシステムベンダーの間でも意見が分かれている。

 なお、この項以降新方式に触れるため、文脈上明確化が必要な場合には、今まで述べてきたPluggableをFront Panel PluggableあるいはFP Pluggableと呼ぶことにする。

 データセンターでは、Front Panel Pluggableが必須であるといわれている。Front Panel Pluggableには、シャシを抜き出すことなく、運用しながら光トランシーバーを交換することで柔軟なネットワーク変更や故障品交換ができるという特長があるからだ。

 圧倒的な数のエンタープラーズデータセンターのさまざまなシステムやネットワーク構成に対応しなければいけないシステムベンダーは、システム設計および部品調達が容易で保守性に優れるFP Pluggableが必要だという。既に建設されたハイパースケールデータセンターでは、例えば5年ごとのハードウェア更新時や拡張時は運用しながら部分に分けて交換することになるのでFP Pluggableの継続を主張している。

 表1に、GoogleによるPluggableと、新しい方式の一つであるCo-packaged Opticsの比較を示す。キーワードはFlexibility, Manufacturability, Serviceabilityだ。システムベンダーやハイパースケーラーには、FP Pluggableで築き上げてきた、光トランシーバーのエコシステムや設置・拡張や保守・運用の方式を継続したいという要求がある。

表1 PluggableとCo-packaged Opticsの比較表(by Google)(クリックで拡大)

 

新方式とシリコンフォトニクス

 一方で、新しい方式を模索している人たちはFP Pluggableの問題を指摘し、次の方式に移行すべきだとしている。新方式としてOn Board Optics(OBO)とCo-packaged Optics(CPO)が議論され、技術開発も行われている。これに関連した標準化の動きとしてMicrosoftが主導し2015年に設立されたConsortium for On-Board Optics (COBO)と、FacebookとMicrosoftにより2019年に設立されたCo-packaged Optics(CPO) Collaborationがある。これら新方式に関しては後ほど詳しく触れる。

 デバイス開発に関しても変化がみられる。光通信の初期から最近の100G PAM4まで、延々と主役であったIII-V族のデバイスにおいて、100GBaud、200G PAM4に向け開発が活発である。これはFP Pluggableを後押しするものであり、800Gあるいは1.6Tまでは、III-V族の化合物半導体がリードしていく可能性が高い。しかし、そろそろ性能限界にも近付いているという見方もあり、他のデバイスの開発も盛んとなっている。

 一方で、ここ2、3年行き詰まり感のあったシリコンフォトニクスは、新方式の議論の中で元気を取り戻してきた。

 マイクロリングやコム・レーザーといった素子を高速大容量伝送に用い、Siに代わってSiNやSiONといったCMOSではおなじみの材料を用いた導波路の研究が活発である。それは、速度限界が見え、III-V族半導体の不得手な並列化、多チャンネル化など、Si ICが得意とする集積化が今後の大容量化の方向と予測されているからである。

 データセンター内ネットワークでは、ファイバー1本に異なる波長の信号を伝送する波長多重が必要だが、従来のシリコンフォトニクスは得意ではなかった。それを、基本要素である導波路をSiからSiNやSiONに変更することで、可能にしようとしている。また、従来広く使われてきたSi p/n接合を用いたマッハツェンダ―変調器では帯域40GHz程度と限界があり、III-V族半導体の後塵を拝していた。これに対し、マイクロリング変調器やLithium Nitride(LN)やEO-polymer、III-V族半導体といった新しい材料をSi基板上で使用した変調器の研究が盛んになってきている。キーワードがCMOS CompatibleからHeterogeneousに移行している。新しいシリコンフォトニクスの幕開けとなるだろう。

 ただし、新旧方式がクロスオーバーすると認識されている1.6T以上の光インタフェースソリューションにつながる技術がまだ示されていない。また、低消費電力(Energy Efficient)と低遅延(Low Latency)という、いわゆるEE & LLに応える技術もこれからである。そろそろ方向性が見える将来技術が明確になってくるのではないかと、2020年12月の「ECOC」(光通信分野の世界最高峰の学会)や、それ以降に開催される予定の学会発表や展示会を楽しみにしている。

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