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NVIDIAがデータセンター売上高で過去最高にArm買収は理想的な選択肢なのか(1/2 ページ)

NVIDIAは2020年8月、2021会計年度第2四半期(2020年4〜6月)の業績発表を行い、データセンター部門の売上高が過去最高を記録したことを明らかにした。Financial Timesは、NVIDIAを新しい“半導体チップの王”として称賛している。

» 2020年08月28日 11時30分 公開
[Nitin DahadEE Times]

データセンター部門の売上高が過去最高に

 NVIDIAは2020年8月、2021会計年度第2四半期(2020年4〜6月)の業績発表を行い、データセンター部門の売上高が過去最高を記録したことを明らかにした。Financial Timesは、NVIDIAを新しい“半導体チップの王”として称賛している(参考)。

 同社の創設者でありCEO(最高経営責任者)を務めるJensen Huang氏は、Financial Timesのインタビューの中で、データセンター市場における支配を確立していきたい考えであることを強調している。また現在、NVIDIAがArmの買収を検討しているのではないかとするうわさが広まっていることも踏まえると、NVIDIAとArmの両社の方向性と運命が変遷していく兆候を捕えることができるのではないだろうか。

 NVIDIAがデータセンターにおける優位性を確立していきたいという展望を掲げている背景には、同社が今回発表した業績に示されている、強固な基盤があるということが分かる。今回の売上高は、前年同期比で50%増となる38億7000米ドルに達した。そのうちデータセンター部門の売上高は、過去最高となる17億5000万米ドルで、前年同期比167%増となる飛躍的な成長を遂げている。また、データセンター部門の売上高全体の約14%は、同社が最近買収したMellanox Technologies(以下、Mellanox)が寄与している。

 Huang氏は、「NVIDIAコンピューティングの採用が加速したことにより、記録的な売上高と桁外れの成長を達成することができた。当社の新しいAmpere GPUアーキテクチャは、発表当初から急激に成長し、世界トップクラスのクラウドサービスプロバイダーやサーバメーカーが、次々とNVIDIAのアクセラレーテッドコンピューティングを提供するようになった。Mellanoxが急激な成長を遂げたのは、クラウドデータセンターにおいてAIサービスを拡大していく上で、高速ネットワーキングの需要が高まったためである」と述べる。

 NVIDIAのエグゼクティブバイスプレジデント兼CFO(最高財務責任者)を務めるColette Kress氏は、アナリストたちに向けて、「当社の次世代アーキテクチャ『Ampere(アンペア)』のハイエンドGPU『NVIDIA A100』は、大手サーバメーカーやクラウドサービスプロバイダーで採用され始めている。クラウドメーカーの顧客の中で最初に市場投入を実現したのが、Google Cloudプラットフォームだ。NVIDIAの歴史の中で最も高速なクラウド向けGPUが実現されている」と説明した。

 「Mellanoxは、イーサネットやInfiniBandなどの製品全体に強みを持っていることが後押しとなって、売上高を増加させている。当社のイーサネット製品の出荷台数は、過去最高を記録した。クラウドコンピューティングやAIなどの分野の成長を受けて、高性能ネットワークの需要増加に拍車が掛かったことから、主要なハイパースケール企業も、2021年第2四半期に大きな成長を遂げている。Mellanoxのネットワーキングは、当社が同四半期に発表した数種類の主要な新製品の中で、非常に重要な役割を担っている」(Kress氏)

 Huang氏は、アナリスト向けのカンファレンスコールの中で、「データセンターの構造的な変化は、AIの加速を必要とする一連の新しいダイナミクスと連動している。AIは、クラウドサービスプロバイダーによって提供される最も重要なアプリケーションだといえる」と述べる。

データセンターの構造的な変化

「NVIDIA A100」

 「データセンターでは、ホスティングアプリケーションからホスティングサービスへと構造的な変化が起きており、これは“ディスアグリゲーテッド(Disaggregated)対ハイパーコンバージド(Hyper-converged)“と呼ばれている。ハイパースケールはもともと、”膨大な数のハイパーコンバージドコンピュータで構成される大規模データセンター“と呼ばれていた。しかし、既存のコンピュータは、かなりディスアグリゲーション化(集合が解かれる)されており、1つのアプリケーションサービスを、複数のサーバ上で同時に実行することができるため、東西トラフィック(East-West Traffic)が大量に発生する。そしてそのほとんどが、AIニューラルネットワークモデルである。このような種類のアーキテクチャであるため、クラウドでは将来的に、2つのコンポーネントと2種類の技術が非常に重要になる」(Huang氏)

 2種類の技術とは、GPUと高速ネットワーキングを指す。サーバがディスアグリゲーション化されるためだ。同氏は、「アプリケーションは細かく分割され、データセンター全体に存在している。アプリケーションが、マイクロサービス向けの他のサーバに一部の回答を送信して実行する必要がある場合、このような移行が全て、東西トラフィックと呼ばれる。このため、それぞれが対応すべき最も重要なことは、超高速かつ低レイテンシのネットワークを調達することである。これこそまさに、Mellanoxが非常に優れている点だ。将来的にさらなるバーチャル化とデジタル化が進むとみられるため、われわれは現在、完璧な状況に置かれていると言える」と述べている。

 NVIDIAの既存のポートフォリオには、GPUとネットワーキングがあるが、次のステップはどうなるのだろうか。Huang氏は、Financial Timesのインタビューの中で、「NVIDIAは、データセンターの運営に必要な完全な技術スタックを提供していきたいと考えている」と述べている。

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