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英国最高裁の特許判決、Huaweiにとって新たな打撃に6年間の闘いに幕

英国の最高裁判所が、中国の通信機器メーカーHuaweiと、米国の大手特許ライセンスグループUnwired Planetとの間の訴訟において、知的所有権関連の法律を根底から覆すことになる画期的な判決を下した。

» 2020年08月31日 11時30分 公開
[John WalkoEE Times]

 英国の最高裁判所が、中国の通信機器メーカーHuaweiと、米国の大手特許ライセンスグループUnwired Planetとの間の訴訟において、知的所有権関連の法律を根底から覆すことになる画期的な判決を下した。

 この訴訟は、英国の法律制度の中で、最初は高等法院、次に控訴院、最終的には最高裁判所と、約6年間にわたって対応が進められてきた(HuaweiおよびZTE対Conversant Wirelessでも、同様の訴訟に関する裁判が並行して行われてきた)。

 今回の訴訟では、Unwired Planetが保有する、2G〜4G(第2〜第4世代移動通信)の全てのセルラー方式技術関連の特許に焦点が絞られた。Huaweiは、これら全ての技術を自社製品に適用している。Unwired Planetは、「Huaweiは、全世代に向けたモバイル通信技術の特許のうち6件を侵害している」と主張した。これら6件の特許は、もともとEricssonが保有していた技術だ。また、この6件の特許のうち5件は、欧州電気通信標準化機構(ETSI)が定める標準必須特許(SEP:Standard Essential Patent)に該当する。

 実際のところ議論の的になったのは、特許そのものではなく、特許ライセンスを付与する際の基本的原則である。このため、今回の判決は将来的に、5G(第5世代移動通信)対応のIP(Intellectual Property)にも同様に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 2020年8月24日の週、Unwired PlanetとConversantに有利な判決*)が下されたことにより、SEPの保有企業は、特許実施者(今回の場合はHuawei)に対し、全てのIPポートフォリオに対応したグローバルライセンスを取得するよう求めることが可能になる。

*)編集注:Unwired PlanetとConversantが、特許侵害訴訟においてHuaweiとZTEに勝訴した第一審について、Huawei/ZTEが控訴したが、それを棄却した。さらに、多国籍特許ポートフォリオにおけるグローバルライセンス条項を英国裁判所が決定できるというもの(参考:JETRO石村国際知的財産事務所)。

 特許実施者がそれに対応しない場合は、差し止め命令を出して、英国市場へのアクセスを制限することになる。

 また今回の判決は、SEP保有者が、自社技術を公正、合理的かつ平等な条件(いわゆるFRAND条件)で第三者にライセンス供与することに同意しなければならないということを意味する。実際に、今回の議論の大半が、英国裁判所によるFRAND条件の適用と解釈に集中していた。

 ETSIの特許政策では、認証されたSEPライセンスを使用している企業は、FRAND条件に基づき、特許実施者にライセンスを供与しなければならないとされる。Huaweiは、「英国の訴訟を解決するために締結されたライセンスは全て、英国特許だけをサポートすることになる」と異議を唱えている。

 しかし、高等法院は2017年に、「大規模な多国籍企業の間で締結されたFRANDライセンスは、世界的ライセンスでなければはならない」とする判決を支持した。現在、最高裁判所もこの判決を支持している。

 裁判官のColin Birss氏は、実際に高等法院の訴訟で下された判決について、「2社の大手多国籍企業が、SEPを国別にライセンス供与するのは、狂気の沙汰だといえる」と述べている。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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