米中間の技術冷戦が激化し、半導体産業に全面的な注目が集まる中、半導体に関する優れた技術が、AI(人工知能)から5G(第5世代移動通信)に至る全ての製品をどのように支えているのかを判断するには、最近のファウンドリーの売上高予測を検討すればよいのではないだろうか。
米中間の技術冷戦が激化し、半導体産業に全面的な注目が集まる中、半導体に関する優れた技術が、AI(人工知能)から5G(第5世代移動通信)に至る全ての製品をどのように支えているのかを判断するには、最近のファウンドリーの売上高予測を検討すればよいのではないだろうか。
専業ファウンドリーの売上高成長率は、ここ数年間にわたって低迷し、2019年には1%減少したが、2020年には19%に急増すると予測されている。米国の市場調査会社IC Insightsによると、その主なけん引要素としては、5G対応スマートフォンの出荷台数が10倍に増加したことが挙げられるという。同社の予測では、2020年の5Gスマホの出荷台数は2億台に達するとみられている。他の市場調査会社の予測では、2億5000万台に達するとの見方もあるようだ。
上記のファウンドリー成長率が現実となれば、2014年以来最も強力な成長を遂げることになる。さらに、市場観測筋の予測では、専業ファウンドリーの売上高は2024年まで継続的に伸び、世界ファウンドリー売上高は909億米ドルに達する見込みだという。2014年の専業ファウンドリー市場の規模は427億米ドルだった。つまり、ファウンドリーの売上高は、10年間で2倍に増加するということだ。
このような強気の見通は、自動車から監視カメラに至るまで、考え得るあらゆるデバイスにAI技術(主に機械学習)が組み込まれる、いわゆる“エッジAI”のトレンドを反映したものであろう。センサーによって生成される膨大な量の非構造データを、エッジあるいはエッジに近いところで処理するための設計には、多くの半導体メーカーが取り組んでいる。
TSMCやGLOBALFOUNDRIESなどの専業ファウンドリーが、こうしたデジタル化や機械学習のトレンドによる恩恵を受けているのは間違いない。TSMCは、半導体プロセス技術の微細化を5nm世代まで進めようとしている。一方のGLOBALFOUNDRIESは、12nmプロセス以降において、同社のFinFETプロセス技術を再度導入している。
またGLOBALFOUNDRIESは、パンデミックの影響で引き合いが高まった技術の例として、FD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター)プロセス技術をベースとしたプラットフォーム「22FDX」の需要が高まっていることを挙げている。主要なアプリケーションとしては、5GモビリティやIoT(モノのインターネット)の導入などがある。
GLOBALFOUNDRIESのCEO(最高経営責任者)を務めるThomas Caulfield氏は2020年9月、「当社はこれまでに、世界各国の顧客企業に向けて3億5000万個の22FDXチップを出荷した。現在、需要は加速の一途をたどっている。これは一時的な傾向ではない」と述べている。
TSMCやGLOBALFOUNDRIESをはじめとするさまざまな専業ファウンドリーは今や、半導体をめぐる世界競争の中で重要な資産となり、米国が、欧米の半導体製造技術に対する中国のアクセスを阻止するための方法を模索していることもあって、その地政学的な影響力を強めている。TSMCが米国アリゾナ州での工場建設計画を実行するのかどうかはまだ不明だが、観測筋も直ちに実施されるとは考えていないようだ。
それでも、もし米国が、半導体研究開発に数十億米ドル規模の資金を投じることによって自国の半導体製造業を復活させるという政策立案を実行することになれば、IC Insightsが提示した強気な予測が現実になる可能性がある。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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