NXP Semiconductors(以下、NXP)は2020年9月、米国アリゾナ州チャンドラーに新設した150mm(6インチ)ウエハーのGaN工場の稼働を開始すると発表した。主に、5G(第5世代移動通信)無線システム向けの通信インフラ市場に注力しながら、将来的には6G(第6世代移動通信)への技術移行を目指していくという。
NXP Semiconductors(以下、NXP)は2020年9月、米国アリゾナ州チャンドラーに新設した150mm(6インチ)ウエハーのGaN工場の稼働を開始すると発表した。主に、5G(第5世代移動通信)無線システム向けの通信インフラ市場に注力しながら、将来的には6G(第6世代移動通信)への技術移行を目指していくという。
NXPでエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるPaul Hart氏は、米国EE Timesのインタビューに応じ、「通信向けRF市場の成長に対応していく上で、自社の生産能力は極めて重要である。自社工場を保有する目的の一つとして挙げられるのが、供給の安全性を確保することだ。また、今後10年間でGaN向け技術を迅速に進展させていく必要もある。われわれがこうした分野において、理想とするペースで活動していくためには、自社で技術の所有権を確保するべきだと考えた。市場において成功を収めるためには、他社との差別化が不可欠である」と述べている。
同社の新しい150mm工場は、産業市場や航空宇宙市場、防衛市場における最先端の通信インフラの普及をサポートしていくという。またHart氏は、「新工場は、あらゆる種類の最先端の品質管理システムを備えており、これらは全て同じ敷地内にある同じ半導体工場に接続されている」と述べる。
オープニングセレモニーでは、NXPの経営幹部や連邦/州/地方政府の官僚たちがスピーチやコメントを提供した。NXPのCEO(最高経営責任者)は、最初に行われた基調講演の中で、「この新工場は、未来の5GのためのGaN技術に不可欠な要素であり、NXPにとっては新時代の幕開けとなるだろう」と指摘している。
NXPの新しいGaN工場は、近々市場に投入予定のあらゆる種類の製品を手掛けることが可能で、2021年初頭までにはフル稼働に達する見通しだという。Hart氏は、「NXPは、過去3年間で約1億米ドルを投じ、既存工場を改造してきた。工場はもともと、一部のエンドオブライン機能向けとして使われていた。NXP社内の多くのGaN専門家たちはこれまで、アリゾナ州チャンドラーを拠点として活動してきたということもあり、既に準備が整っていた既存の生産能力をうまく活用することができた」と述べる。
5G導入に伴い、必要とされるRFソリューションの密度が指数関数的に増加しているため、エネルギー消費量の削減が不可欠だ。そこで、最高クラスの性能を提供することが可能なGaNパワートランジスタの実現が、目標として掲げられるようになってきた。
NXPは、自社のGaN技術を最適化することによって、こうした高性能のGaNパワートランジスタの開発を進めてきた。
「NXPは、2014年に新しいGaNソリューションを提供し始めてから、時間をかけて自社技術を完成させてきた。その後、2016年に独自プロセスを開発したことによって、技術開発力と製品開発力が互角になり、最先端技術をベースとしながら、かなり速いペースで勝負できるようになった」(Hart氏)
同氏は「われわれはこのようにして、過去20年間をかけてRFパワー市場分野に進出してきた。最も優れた技術であるシリコンLDMOS(横方向拡散MOS)ソリューションを開発したことにより、1990年代半ば以降、市場リーダーとしての地位を確立してきた」と続ける。「こうした技術の実現により、18〜24カ月ごとに新世代のプロセス技術を開発して、効率や直線性、性能などを大幅に向上させることに成功している。また当社の製品は、システム工学や製品工学、デバイス技術などと密接に連携することにより、絶え間なく進化する通信業界に非常にうまく足並みをそろえることができた。将来的にも、このような方法でGaN開発を実現していきたいとの考えから、多額の資金を投じて新工場を設立するに至った」(Hart氏)
新しいGaN工場のフラグシップ製品は、MIMOアンテナアレイを必要とする5G無線インフラ向けのRFパワーアンプである。
Hart氏は、「5Gは、世界的に5G向けの幅広い周波数レンジとされている3.5GHz帯の他、1.8GHz帯や2.1GHz帯のような既存の低周波数帯の使用も検討されている。NXPはまさに、これらの周波数帯をターゲットにチップ開発を進めているところだ。さらに、ファウンドリーパートナーと共同でGaN製品を開発している」と述べる。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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