TSMCは、今後数年間はHPC(High Performance Computing)が同社の成長を主にけん引すると予想しており、その成長は現在のスマートフォン事業を上回る見通しだという。
TSMCは、今後数年間はHPC(High Performance Computing)が同社の成長を主にけん引すると予想しており、その成長は現在のスマートフォン事業を上回る見通しだという。
同社は、「当社は2020年第3四半期の技術的リーダーシップによって、5G(第5世代移動通信)とHPCの受注を獲得した。これにより、同年の成長率は約30%上昇する見通しで、半導体業界全体の成長にもつながると考えている」と述べている。
米中ハイテク戦争によって中国Huaweiが米政府からブラックリストに指定され、TSMCはHuaweiへの販路を絶たれる見通しだ。それにもかかわらず、同社はこうした予測を立てている。2020年現在、TSMCにとってHuaweiはAppleに次ぐ大口顧客であるが、米国の規制に準拠した場合、2020年第4四半期にはHuaweiへの売り上げがゼロになるとみられる。だが、TSMCは、Huawei向け事業の損失を難なく補てんできるようだ。TSMCの設備稼働率は上限に近づいており、顧客の需要に対応するのが難しくなっていた。
TSMCのCEO(最高経営責任者)を務めるC.C. Wei氏は、2020年10月に台湾で開催した2020年第3四半期の決算発表で、「現在、需要に対する供給可能量に若干の不足があることは確かだが、顧客企業にサービスを提供するために最善を尽くしている」と述べた。
同社によると、Samsung Electronicsとの競争が激化している5nmプロセス「N5」が2020年の収益の約8%を占め、2021年には約20%に増加する見通し。米国の銀行持株会社であるJPMorgan Chaseでアナリストを務めるGokul Hariharan氏によると、7nmプロセスではTSMCの市場シェアは約88%だという。
英国の株式調査会社であるArete ResearchのBrett Simpson氏によると、TSMCは健全な成長期に入っており、特に先端プロセスでは今後数年にわたって生産能力の逼迫(ひっぱく)が予想されるため、生産環境を整備しているという。
同氏は、EE Times向けに作成したレポートの中で、「ファウンドリーのファンダメンタルズは、Huaweiとの取引がなくても改善傾向にある」と述べている。
Simpson氏によると、短期的な変動要因としては、IntelからTSMCへのアウトソーシングが増加する可能性や、Huaweiへの販売に関する米国政府の方針変更などが考えられるという。
スイスの投資銀行Credit SuisseのアナリストであるRandy Abrams氏によると、AMDがGLOBALFOUNDRIESからTSMCに発注先を変更したことで、TSMCのHPC需要が増加しているという。ゲームや機械学習アクセラレーター、PC周辺機器の受注が堅調であることも、HPCの需要増を支えている。ウェアラブルデバイスやスマートホームが好調であることから、IoT(モノのインターネット)分野の受注も伸びている一方で、車載分野の需要は停滞しているという。
TSMCは、不確実性が続く中でサプライチェーンによる供給を保証する必要性を考慮した上で、「顧客向けの全体の在庫は、2020年末まで過去の季節的な水準を上回る量を確保できる」としている。
TSMCによれば、同社の2020年の設備投資額は約170億米ドルになるという。
TSMCの次のハーフノードは5nmの「N4」となる。N5と同じ設計ルールを持ちながら、性能、消費電力、ロジック密度はN5で製造する場合よりも高められる。N4のリスク生産は2021年第4四半期に、量産は2022年に開始される予定だ。Wei氏は「TSMCにとって、5nmファミリーは息の長いプロセスノードになる」と語っている。
N5の次世代のフルノードは3nmの「N3」だ。N5に比べ、性能が最大30%向上し、消費電力は30%低減、ロジック密度は70%増加するという。N3のリスク生産は2021年に、量産は2022年後半を予定している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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