古河電気工業(古河電工)は2020年11月17日、電装エレクトロニクス材料事業の事業説明会を実施、同事業の通期予想や今後の戦略などについて説明した。
古河電気工業(古河電工)は2020年11月17日、電装エレクトロニクス材料事業の事業説明会を実施、同事業の通期予想や今後の戦略などについて説明した。
古河電工の電装エレクトロニクス材料事業は、導電材、巻線、銅条、高機能材、銅管などを展開。2019年度の売上高で見ると、同事業は全体(9144億円)の27.5%(2517億円)を占めている。
2020年度上期の同事業は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大などを背景に、自動車用途関連製品を中心に減収、売上高は前年同期比517億円減の800億円、営業利益も同19億円減のマイナス4億円となった(銅管事業譲渡、太物巻線事業譲渡といった事業再編の影響も含んでいる)。ただし、同社は「エレクトロニクス市場、車載市場は回復基調にある」と説明。通期売上高は前年比817億円減の1700億円となり、営業利益は上期の赤字を下期で打ち消す見込みとしている。
なお、上記のマイナス影響について細かくみると、COVID-19感染拡大の売上高への影響は通期予想で約530億円(上期は約340億円)、営業利益への影響は通期予想で約20億円(上期は約15億円)となる見込み。事業再編の売上高への影響は、通期予想で約400億円(上期は約150億円)、営業利益への影響は通期予想で約10億円(上期は約3億円)の見込みだ。
同事業では、エレクトロニクス市場におけるIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの新デジタル化および、自動車市場でのCASE(Connected、Autonomous、Shared&Services、Electric)の発展に向け、通信や制御デバイス、センサー、受動部品などへの素材要求の変化に合わせた付加価値が高い製品の拡販を強化していくことを中期的な基本方針として掲げている。
その上で今後の戦略として、「耐熱無酸素銅条『GOFC』など無酸素銅条のパワー半導体および放熱部材向け拡販」「電子機器の高機能化に対応したオリジナル合金の拡販」「5G(第5世代移動通信)インフラ向けやサーバ用インダクター向けに差別化した巻線の拡販」「NT合金(ニッケル-チタン合金)製品の医療用器具向け需要を着実に取り込むための体制構築」の4点を挙げた。
特に、無酸素銅条については、PHV(プラグインハイブリッド車)やEV(電気自動車)化の進展によってパワー半導体デバイスの搭載が飛躍的に増える見込みとした上で、GOFCが、「パワーモジュール用基板やその周辺部材の材料となり、高純度で耐熱性に優れていることから作業効率の向上、品質安定性の確保に貢献する」と強調している。また、NT合金製品は、カテーテルを誘導するガイドワイヤやステント用チューブなどの医療用で需要が拡大しており、同社の生産設備はフル操業中という。同社はこの拡大する需要を取り込むため、新工場を建設中だ。同工場は2020年12月完成予定で、生産能力は2018年度実績比で50%増強される見込みとしている。
さらに、同社は自動車市場、エレクトロニクス市場への対応について、市場ニーズと同社の強みを挙げながら説明。自動車市場では軽量化、小型化および、長期信頼性への要求の他、「ADAS(先進運転支援システム)には高性能なセンシング部品が不可欠だ」と市場ニーズに言及した。エレクトロニクス市場では、5Gの本格導入に向けて課題となる「熱制御」や部品のモジュール化、EMS制御といったニーズを挙げ、下図のような製品群を強みとして市場を開拓していく方針を示した。
また、両市場の成長に合わせ、2020年度中に白根工場(新潟市南区)でリボン線およびステンレス鋼線の超極細線に関する設備投資を行うことも明かした。リボン線は、導体形状が帯状のマグネットワイヤ。その形状や導体の特長から、コイルの小型化や性能向上ができる。従来、断面が長方形の形をしたものが中心だったが、市場からの性能向上の要請に対応するため、真四角なものや角が直角に近いものなど特殊な製品を生産していく方針。ステンレス鋼線については、「年を追うごとに線形が細くなる要求がある」と説明。さらなる極細線の量産設備や新製品のトライアル設備を計画するという。
投資額はそれぞれ数千万円規模。2021年度以降については、「市場の伸長に合わせてタイミングを見ながら必要な投資をしていく」としている。
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