中国・武漢市の半導体ファウンドリーHSMC(Hongxin Semiconductor Manufacturing Corporation)が、中国と米国の技術戦争における最新の犠牲者となるのかもしれない。
中国・武漢市の半導体ファウンドリーHSMC(Hongxin Semiconductor Manufacturing Corporation)が、中国と米国の技術戦争における最新の犠牲者となるのかもしれない。
HSMCの元CEOであるShang-yi Chiang氏によると、負債に苦しんでいた同社は現在、破綻寸前の状態にあるという。HSMCは、14nm〜7nmプロセスの先端ロジックウエハーを製造する目的で、2017年11月に設立された。
同氏は、米国EE Timesに宛てたLinkedInメッセージの中で、「投資家たちが資金不足に陥ったのだ。私はこのような事態にとても驚いている。もう全てが終わりだ。私は米国カリフォルニア州に帰ってきたところだ」と述べたが、詳細については明かさなかった。同氏はかつて、TSMCの研究開発部門の責任者を務めていた人物である。
South China Morning Post(SCMP)紙が報じたところによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発祥地とされている武漢の地方政府が、HSMCを引き継ぐという。そして同社は、武漢市の東西湖区政府の国務院国有資産監督管理委員会の管理下に置かれることになる。
報道によると、HSMCの200億米ドル規模の半導体工場は、COVID-19の感染拡大に巻き込まれ、資金調達不足に陥ってしまったという。
またSCMPによると、かつてはHSMCの全株式の90%をBeijing Guangliang Lantu Technologyが、残りの10%を東西湖区政府が、それぞれ保有していたという。HSMCは今回、EE Timesの電話インタビューには応じなかった。HSMCのWebサイト上のマネジメントチームに関するページは、空白になっている。
HSMCの立ち上げ計画 | |
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【14nmプロセスのプロジェクト】 | |
2019年3月 | 14nmプロセスのR&D部門を立ち上げ。工場建設の第1期が始まる |
2019年10月 | クリーンルームが完成か |
2019年11月 | 半導体製造装置の設置が完了か |
2020年前半 | 最初のテストチップがテープアウトする予定 |
2020年後半 | SRAMのマスターディスク(原版)について最初の機能テストを開始する予定 |
【7nmプロセスのプロジェクト】 | |
2020年 | 7nmプロセスのR&Dを開始する予定 |
2021年 | 第3四半期にもSRAMマザーボードの機能テストを開始し、最初のテストチップを製造する予定 |
米国政府は、戦略的な競争相手である中国半導体業界が、5G(第5世代移動通信)やAI(人工知能)などの重要な分野で優位性を確立する可能性があることを恐れ、その進捗を鈍化させようとしてきた。
米国は2020年9月、「上海に拠点を置くSMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation)に供給された機器が、軍事目的で使用された可能性がある」という受け入れ難い危険性が存在するとの判断から、輸出を制限する措置を講じた。米国は、米国製のEDAツールや半導体製造装置の中国への輸出を規制することで、SMICとHSMCの規模拡大を制限したのである。
SMICとHSMCは、既に5nmプロセスチップの製造を開始しているTSMCやSamsung Electronicsなどの競合との差を埋めようと、7nmプロセスチップの製造を開始する計画を立てていた。
中国は、世界最大の半導体市場を保有しているが、その供給量は、世界半導体需要全体の20%にも満たない。2020年における中国の半導体輸入額は、3000億米ドルを上回り、石油輸入額を超えるとみられている。
半導体は、米国と中国の技術的優位性をめぐる競争において、最も重要な要素の一つと言っても過言ではない。アジアの半導体メーカーは、米国からの投資が減少すると同時に、半導体生産量を増加させている。
ロイター通信は、中国の国有企業であるTsinghua Unigroup(清華紫光集団)が13億元(約206億1564万円)の債務不履行に陥ったと報じているが、それと同時にHSMCのニュースも浮上した。ロイターは、この債務不履行が引き金となり、Tsinghua Unigroupの信用格付けが下がり、同社の財務健全性がますます弱まるだろうと報じた。
Tsinghua Unigroupは、中国のチップ設計会社であるUnisocやGuoxin Micro、NAND型フラッシュメモリを手掛けるYangtze Memory Technologies Corporation(YMTC)の親会社でもある。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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