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日本最高峰のブロックチェーンは、世界最長を誇るあのシステムだった踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(9)ブロックチェーン(3)(8/10 ページ)

» 2020年12月25日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

天皇制とは、与信システムそのものだ

 さて、ここから本日のメインテーマ、「天皇制=与信システム」の話に入りたいと思います。

 以前、私は、天皇陛下のお仕事の“量”を、数値を使って定量的に推測してみたことがあります。その結果については「長時間労働=美徳の時代は終わる 〜「働き方改革」はパラダイムシフトとなり得るのか」をご覧いただくとして、私が驚いたのは、日本国というシステムが「天皇陛下がいなくなったら、全機能が停止する」ように設計されているという事実でした。

 天皇陛下のお仕事は、我が国にとって必要不可欠であり、その責は気の遠くなるような「重さ」でした。私は陛下のうつ病を心の底から心配しましたし、今でもご健康を心配しています ―― そして、同時に、ものすごく後ろめたい気持ちにもなっています。

 もし陛下にお会いする機会が得られたら、「ありがとうございます」の前に、「本当にすみません」と謝ってしまいそうです ―― が、そんなことよりも、もっと大切なことがあります。

 首相を任命し、法律を公布し、国会を招集し、内閣を承認しているのは、天皇陛下であるということです。つまり、私たちが信用の根拠としている日本国政府を認証しているのは「天皇陛下」ご自身であり、「天皇陛下」は我が国最高位の「ルート認証局」であり、その認証局を含む認証システム全体が「天皇制」なのです。

 つまり天皇制は、天皇陛下御自身と内閣と宮内庁と連携するだけの「サブシステム」ではなく、日本国民全員の「信用」の根拠を与える、「日本最大の与信システム」なのです。

 これを、通貨フリークのMさんからご教示頂いた時の、私の衝撃をご理解頂けるでしょうか? いや、できまい(断言)。

 私はティーンエージャーのころから、ずっと「天皇制というシステム」について考え続けてきて、合理的な解釈ができずに、ずっと心の中にトゲのように引っ掛かったまま生きてきた日本国民の一人です*)

*)例えば、「天皇陛下のお忙しさや重責には本当に申し訳ない」と口にしても、「特定の方を犠牲にすることを前提とするシステムなら、廃止したほうが良くね?」とは言わないのはなぜだ? とか。

 閑話休題。

 現行の我が国の憲法においては、「天皇陛下」が我が国最高位の「ルート認証局」であることは、疑いはありません。しかし、過去においてはどうだったのか気になったので、調べてみました。

 天皇制は、古代においては「与信システム」ではなく、「軍事と祭祀のトップ」でした。そして、645年の大化の改新によって「権力主体」となりました。その後は、軍事政権(幕府)の傀儡(かいらい)やら、文化継承者を押しつけられてきました。

 そして、明治時代以降に、「(形式的な)権力主体」に戻り、そして、現在の”象徴天皇制”(私(江端)の言うところの、「与信システム」としての天皇制)に至ります。ですが、天皇制は、当初から与信システムとして機能してきた訳ではないようです。しかし、現在の我が国においての天皇制に対する信用は”絶大” ―― というか”絶対的”です。MicrosoftとAppleとGoogleを足して100倍にしても、全く勝負にならないでしょう。

 単なる「ルート認証局」の説明では足りない。もう一つ何かが必要だ ―― と、悶々と悩んでいろいろな文献を漁っていました。その中の一つに宮内庁の天皇系図がありました。

 そして、翌日、久々の出社(原則、在宅勤務)で駅に向かう途中の道で、私は「あること」に思い至り、思わず声を上げました。

―― ブロックチェーンだ。

 そうです。天皇制への信頼は、その「台帳記録」と「信用構築の手段」およびその「修正方法(フォークなど)」が担保する、ブロックチェーン(のコンセンサスアルゴリズム)にあったのです。

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