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東京工大とNTT、高周波信号の量子化分配器を実現一次元プラズモン回路で構成

東京工業大学とNTTの共同研究グループは、一次元プラズモン回路による高周波信号の量子化分配器を実現した。今回の研究成果は量子コンピュータ用制御回路などに応用できるという。

» 2021年01月13日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

量子コンピュータ用制御回路などに応用

 東京工業大学超スマート社会卓越教育院のChaojing Lin特任助教と理学院物理学系の藤澤利正教授および、NTT物性科学基礎研究所の橋坂昌幸主任研究員らによる共同研究グループは2021年1月、一次元プラズモン回路による高周波信号の量子化分配器を実現したと発表した。今回の研究成果は量子コンピュータ用制御回路などに応用できるという。

 研究グループは、量子ホール効果を用いた一次元プラズモン回路やその電子物性に着目し、研究してきた。不整合による反射が原理的に存在せず、決まった方向に信号が伝搬することで、高速で正確な信号伝達が可能になるためだ。ところが、高周波の入力信号を正確な整数比で、複数に分けて出力できる分配器を実現することは、これまで難しかったという。

 開発した量子化分配器は、波束状の電圧パルス(電荷量q)を入射すると、一次元プラズモン回路を伝搬し、Y字型の分岐路で電荷量が正確な比率で分配され、それぞれの信号として出力される。この時の整数分配比は、量子ホール効果におけるランダウ占有率で決まるという。

 Y字分岐を構成する周囲の3つの領域(A、B、C)におけるランダウ占有率(νA、νB、νC)の値が、νA=2、νB=1、νC=0であれば、1:1量子化分配器となる。νA=1、νB=2/3、νC=0にすれば、2:1量子化分配器を構成できるという。ランダウ占有率の値がわずかにずれていても、整数比率で正確に電荷を分配できることが分かっている。また、分配比率はランダウ占有率を選ぶことで切り替えることができる。

上図は量子化分配器(分配比率は左が1:1、右は2:1)の模式図。下図は実験結果 (クリックで拡大) 出典:東京工業大学、NTT

 今回の実験には、GaAsとAlGaAsの半導体ヘテロ構造を微細加工した素子を用いた。この素子にはオーミック電極(ΩI、ΩD)とゲート電極(G1、GI、GD)が形成されており、半導体ヘテロ構造とゲート電極G1が重なった領域でループ回路を構成した。

量子化分配器実証用素子の写真 (クリックで拡大) 出典:東京工業大学、NTT

 この素子に、電荷量qの波束を入力し、Y字分岐した他方の出力に現れる電荷量を測定した。この結果、1:1分配器ではq/2、q/4、q/8といった電荷量を、2:1分配器では2q/3、2q/9といった電荷量をそれぞれ測定することができた。これにより、量子化分配器が電荷を、正確な整数比で分配できることを確認した。これらの動作は極低温強磁場中で検証した。

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