東京工業大学らの研究チームは、小型衛星に搭載できる5G対応のミリ波帯フェーズドアレイ無線機を開発していく。2022年度に打ち上げが予定されている小型衛星への搭載を目指す。この技術により、小型衛星による衛星コンステレーションを活用したインターネット網の構築などが可能となる。
東京工業大学らの研究チームは2020年10月、小型衛星に搭載できる5G(第5世代移動通信)対応のミリ波帯フェーズドアレイ無線機を開発していくと発表した。2022年度に打ち上げが予定されている小型衛星への搭載を目指す。この技術により、小型衛星による衛星コンステレーションを活用したインターネット網の構築などが可能となる。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、「革新的衛星技術実証3号機」の宇宙実証テーマとして、サカセ・アドテックらが提案する「Society 5.0に向けた発電・アンテナ機能を有する軽量膜展開構造物の実証」を選定した。このテーマに、東京工業大学工学院機械系の坂本啓准教授らの研究チームや、同電気電子系の岡田健一教授と白根篤史助教らの研究チームが参画して、開発に取り組むこととなった。
東京工業大学らの研究チームが担当するのは、小型衛星に搭載し宇宙空間で展開する、ミリ波帯利用の5Gシステム向けフェーズドアレイ無線機の開発である。これを実現するため、これまで異なる研究者がそれぞれ開発してきた2つの独自技術を融合することにした。
その1つは、坂本准教授らが超小型衛星(3Uキューブサット)「OrigamiSat-1」向けに開発した技術である。それは、打ち上げのときは折り紙のように折り畳み、宇宙で展開する膜面宇宙構造物上に、薄型デバイスを貼り付け、配線する技術である。
もう1つは、岡田教授や白根助教らが開発したミリ波帯フェーズドアレイ無線機である。ビームフォーミング技術を活用して、アレイアンテナを展開した後の非平面度を電気的に補償することで、構造物の軽量化や高収納率化を可能にする技術である。
具体的には、宇宙空間で展開する1×1mの膜面上に搭載されるフェーズドアレイ無線機を開発する。この無線機は、約7×7cmサイズのフェーズドアレイ基板が2枚に分割された状態となっている。実験では、2枚の基板が同じ平面上になくても、アンテナ素子が電気的に電波の放射方向を変更することで、非平面度が補償されることを実証していく。
軽量で高い収納率の衛星搭載フェーズドアレイ無線機を実現することで、小型衛星にも大型のアンテナを搭載することができる。これによって、通信の高速化や大容量化、距離増大が可能となる。将来的には、小型衛星による衛星コンステレーションを活用したインターネット網の構築や、リアルタイムでの地球観測、探査小型機からの長距離通信などが可能になるとみている。
研究チームは、今回の宇宙実証における成果をベースに、フェーズドアレイのさらなる大型化を目指すとともに、地上通信網と非地上通信網の融合を進めていく考えだ。
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