岐阜大学やソフトバンク、情報通信研究機構(NICT)らによる研究グループは、スマートフォン搭載のレンズよりも開口面積が小さい超小型アンテナを用いて、300GHz帯テラヘルツ無線通信に成功した。
岐阜大学とソフトバンク、情報通信研究機構(NICT)および、National Research Tomsk State UniversityとTomsk Polytechnic Universityの研究グループは2021年1月、スマートフォン搭載のレンズよりも開口面積が小さい超小型アンテナを用いて、300GHz帯テラヘルツ無線通信に成功したと発表した。
研究グループは2020年6月に、フォトニックジェット効果を用いた小型誘電体アンテナ(DCA)の開発成果を発表した。アンテナの外形寸法は1.36×1.36×1.72mmと極めて小さい。アンテナの開口面積と利得は比例関係にある中で、開発したアンテナは開口面積が1.8mm2で、利得は約15dBiを達成した。
研究グループは、開発したアンテナとホーンアンテナ(外形寸法は9.0×9.0×47.5mm、利得23dBi)を組み合わせて伝送実験を行い、600mmの区間で伝送速度17.5Gビット/秒の無線伝送に成功した。この伝送速度は、試験に用いた計測機器の性能に制限された値だという。開発したアンテナから送信された信号の波形を観測したところ、狭窄(きょうさく)化などの劣化はないことが分かった。
送受信機間の距離とビット誤り率(BER)についても測定した。この結果、伝送距離が600mm以下では、FEC limt(BER=3.8×10-3)以下のBERであることを確認した。
近年、伝送速度が100Gビット/秒以上のBeyond 5G(第5世代移動通信)/6G(第6世代移動通信)技術について、活発な研究が行われている。ここで注目されているのがテラヘルツ無線である。5Gで用いられるミリ波帯に比べ、より広い周波数帯域を利用できるため、高速無線通信が可能となる。しかし、スマートフォンなど小型端末で活用するには、アンテナの形状などが課題となっていた。
今回の伝送実験では、市販の部材で構成された送受信機を用いた。開発したアンテナを、出力や受信感度がさらに高いトランシーバーなどと組み合わせれば、より長距離の通信が可能になるとみている。
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