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「ISSCC 2021」の注目論文、Samsungの3nm GAA SRAMなど2021年2月にオンラインで開催(2/3 ページ)

» 2021年01月18日 16時15分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

機械学習

 前回から新たに設けられたカテゴリーである「機械学習」は、論文投稿数が急増した分野だ。2020年は24件だったが、2021年は41件に増加した。そのうち13件が採択された。説明を担当した東工大の木村真人氏は「中国からの投稿が活発。今回、3件採択されたが、全て清華大学からの論文で、同大学が非常に力のある研究機関となっていることが伺える」と述べた。

 「機械学習」のトレンドとしては、IoT(モノのインターネット)からクラウドまでの幅広い分野で、新しいDNN(ディープニューラルネットワーク)応用の開拓を狙ったチップが登場していることが挙げられると、木村氏は続ける。その他、インメモリ型DNNチップ分野の研究が活発なことと、ソニーが発表する3次元積層、Samsungが発表する5nmプロセスなど、ハードウェアの実装技術も高度化していることも挙げた。

 Samsungは[9.5]番で、6000個の積和演算器を搭載した、5nm適用のモバイル向けSoCを紹介する。8ビット量子化時において、623推論/秒の高速推論、13.6TOPS/Wのエネルギー効率を実現したという。

 ソニーセミコンダクタソリューションズは[9.6]番の論文で、12.3メガピクセルの裏面照射型CMOSイメージセンサーとCNN(畳み込みニューラルネットワーク)推論処理プロセッサの3次元積層技術を報告する。8ビット/16ビット/32ビットをサポートする2種類のDSPコアを搭載し、撮像から推論処理までを120fps(フレーム/秒)で実行可能だとする。DSPは22nmプロセスを用いて製造していて、4.97TOPS/Wの性能を実現する。

デジタルアーキテクチャ

 「デジタルアーキテクチャ」の採択論文数は13件。日本からは3件が採択され、日本の存在感を示すカテゴリーとなっている。例えばルネサス エレクトロニクスは[4.2]番の論文で、空冷としては最高レベルとなる60.4TOPS(13.8TOPS/W)のCNNエンジンを搭載した自動運転向けプロセッサ技術について発表する(関連記事:「1チップで自動運転に必要な処理が可能、「R-Car V3U」」)。

 日立製作所は[4.6]番で、144Kビットスピンで大規模組み合わせ最適化問題を解くアニーリングシステムを報告する。同システムは、16Kビットのスピンを搭載したアニーリングプロセッサチップを9個(3×3のマトリックス)接続して構成されている。スピン係数は5ビットと、高い精度を実現。9チップを接続するチップ間接続も、最適化することで低レイテンシを達成したとする。

 早稲田大学は[36.3]番でハードウェアセキュリティ、具体的にはチップ固有の乱数を生成するPUF(Physically Unclonable Function)について発表する。フィードバックSPNと呼ばれる構造を持ち、2000万CRP(Challenge Response Pairs)の機械学習によるモデリング攻撃にも耐えるPUFを報告する。ホットエレクトロン注入でPUFセルを安定化したことで、ビットエラー率を0.73%未満に低減していることも特長だ。

イメージャ/MEMS/医療/ディスプレイ

 「イメージャ/MEMS/医療/ディスプレイ」でも、アジアの強さが目立つ。特に、イメージャと測距センサーをテーマにした「Session 7」では、発表される論文9件のうち7件が日本と韓国からのもので、アジア勢の活発さが見て取れる。

 説明を担当したソニーセミコンダクタソリューションズの若林隼人氏は、このカテゴリーのトレンドとして、マルチカメラの普及、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)や自動運転に向けたRGBセンサーや測距センサーの需要拡大が進んでいることを挙げた。

「イメージャ/MEMS/医療/ディスプレイ」で報告される予定の測距センサー、イメージセンサーの内容 出典:ISSCC ITPC Far East Regional Subcommittee(クリックで拡大)

 注目論文としては、まずSamsungが[7.1]番で4Tap型の120万画素間接ToF(Time of Flight)イメージセンサーを報告する。ピーク電流を抑制でき、複数のユーザー間での干渉を除去する機能を搭載している。

 ソニーセミコンダクタソリューションズは[7.3]番の論文で、車載向けの直接型ToFイメージセンサーを発表する。117klux(キロルクス)という明るい環境の下でも、200mという長いレンジを0.1%の精度で測距できることが特長だ。[7.6]番では、14ビットデルタシグマA-D変換器を搭載した裏面照射型CMOSイメージセンサーを発表する。このA-D変換器にはkTC雑音を除去できるS/H(サンプル&ホールド)回路を用いているので、1.18ermの低ノイズと、250fpsの高速読み出しを達成したという。

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