「メモリ」では、16件の採択論文のうち12件がアジアから提出されたものだった。DRAMのセッションでは、SK hynixが[25.1]番で、GDDR6の速度を24Gbps/pinに向上させた技術を、Samsungが[25.2]番で、LPDDR5の容量を16Gビット/チャンネルに増加させた技術を、それぞれ報告する。これまで、速度は「ISSCC 2018」の18Gbps/pin、容量はISSCC 2020の12Gビット/チャンネルというのが最高レベルだった。高速メモリインタフェースでは、PAM4を実装したGDDR6Xが報告される。
大容量NAND型フラッシュメモリでは、SK hynixが[30.1]番で、ワード線の積層数を176層に増やした3D NANDフラッシュを報告する。その他、先端組み込みメモリをテーマにした「Session 24」では、Samsungが初の3nm GAA(Gate-All-Around)プロセスを適用したSRAMを発表する。
「データコンバーター」のカテゴリーでは、「論文が採択されるには高度な技術の蓄積が必要とされるため、IntelやSamsungといった大手企業からの採択が目立った」(説明担当の日立製作所・大島俊氏)という。トレンドとしては、変換効率を高めやすい連続時間型A-D変換器の発表が増加していることや、高度な技術を組み合わせて変換効率の限界を追求するという継続的な取り組みがみられる。大島氏によれば、変換効率はこの15年間で1000倍(同じ変換性能なら消費電力が1000分の1、もしくは同じ消費電力なら1000倍の変換性能)にも向上されているという。
中国の清華大学らは[27.1]番で、低消費電力の逐次比較型変換と、高分解能のデルタシグマ型変換を組み合わせたハイブリッド変換器を“理想的に”実現する新しい回路を適用した変換器を報告する。「こうしたハイブリッドな変換器の研究はこれまでもあったが、性能の劣化や消費電力の増大といった課題があった」と大島氏は説明する。今回発表される変換器は、250kHzという比較的広い帯域幅の入力信号に対して、93dBの変換精度(15ビット)をわずか340μWの消費電力で実現している点が評価された。
Intelは[10.6]番で、5Gおよびポスト5G無線の基地局向けに、高性能なD-A変換器を発表する。容量型回路で、16GS/s(Gサンプル/秒)の変換速度と12ビットの分解能を実現したものとなっている。
「パワーマネジメント」の分野では、18件の採択論文中10件がアジアから提出されたものだった。説明を担当した信州大学の宮地幸祐氏は、同カテゴリーの注目点として、ハイブリッドコンバーター(容量とコイルの両方を電力変換に用いるコンバーター)の論文数が好調なことと、GaNやGaN-on-Siliconプロセスを用いたゲートドライバー技術が進化している点を挙げた。
米ダートマス大学は[17.1]番で、ポータブル機器の電源に向けた縦続構成ハイブリッドコンバーターについて報告する。これは、5V→1.2V降圧で最高96.9%の効率を、5V→0.4V降圧でも85%以上の効率を実現できる。さらに、10マイクロ秒未満という高速起動や、優れた負荷変動応答(1A/マイクロ秒の負荷変動に対して、電圧変動は36mV未満)を実現する制御回路も提案する。
台湾の国立交通大学は[33.1]番で、650VのGaNトランジスタとゲートドライバーをGaN-on-Siliconプロセスでモノリシックに集積し、大幅な小型化とコストダウンを実現する技術を発表する。温度やプロセス変動によるGaNトランジスタのしきい値電圧の変動をトラッキングして補償し、50MHzの最大動作周波数と、118.3V/ナノ秒の最大スルーレートを実現している。
「アナログ」では、12件の論文が採択された。そのうち6件(共著も含めると7件)がオランダのデルフト工科大学からで、同大学が非常に強みを持っていることが伺える。日本からは、アナログ・デバイセズがワイヤレスイヤフォン向けのD級アンプを発表する。フィルターレスのデジタル入力デルタシグマ型D級アンプで、THDが93dB、S/N比が113dB、最高効率が83%だという。
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