今回は、中国の3D NANDフラッシュベンチャーであるYMTC(Yangtze Memory Technologies Co., Ltd.)の現状に関する講演部分を紹介する。
フラッシュメモリとその応用に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」が2020年11月10日〜12日に開催された。FMSは2019年まで、毎年8月上旬あるいは8月中旬に米国カリフォルニア州サンタクララで実施されてきた。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の世界的な大流行(パンデミック)による影響で、昨年(2020年)のFMS(FMS 2020)は開催時期が3カ月ほど延期されるとともに、バーチャルイベントとして開催された。
FMSは数多くの講演と、展示会で構成される。その中で、フラッシュメモリを含めた不揮発性メモリとストレージの動向に関するセッション「C-9: Flash Technology Advances Lead to New Storage Capabilities」が興味深かった。このセッションは4件の講演があり、その中でアナリストによる3件の講演が特に参考になったので、講演の概要をご紹介する。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
本シリーズの前回から、半導体メモリのアナリストであるMark Webb氏の「Flash Memory Technologies and Costs Through 2025(フラッシュメモリの技術とコストを2025年まで展望する)」と題する講演の概要をご紹介している。前回は、3D NANDフラッシュメモリ(以降は「3D NANDフラッシュ」と表記)大手の近況を報告した。今回は中国の3D NANDフラッシュベンチャー、YMTC(Yangtze Memory Technologies Co., Ltd.)の現状に関する講演部分を紹介する。なおYMTCに関しては本誌に詳しい記事(「NANDで競合猛追を狙う中国YMTCの野心」)があるので、興味のある方は参照されたい。
YMTCは2016年7月の創業である。本社と工場は中国の武漢(Wuhan)に位置する。3D NANDフラッシュの設計と製造、販売を手掛ける垂直統合型の半導体メモリメーカーだ。YMTCのウェブサイトによると、2014年10月に3D NANDフラッシュの開発プロジェクトが始まった。このときの開発組織は、YMTCの前身であるXMC(Wuhan Xinxin Semiconductor Manufacturing Corp.)とみられる。プロジェクトが始まって8カ月後の2015年6月にはメモリセル・ストリングが9層のシリコンダイを試作し、電気的特性を検証した。翌年の7月には、32層のテスト用シリコンダイの設計を完了した。
YMTCは同じ7月に、中国の大手電子企業グループTsinghua Unigroup(紫光集団)と、中国政府(国家集積回路産業基金)、湖北省政府(湖北集積回路産業基金)、武漢市政府の共同出資による合弁会社として設立された。このときTsinghua Unigroup(紫光集団)がXMCを買収しており、XMCはYMTCの子会社という位置付けになった。
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