今回は、次世代の3D NANDフラッシュについて解説する。次世代3D NANDフラッシュでは、176層の高層化と、QLC(quadruple level cell)方式の多値化が主流になる。
フラッシュメモリとその応用に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」が2020年11月10日〜12日に開催された。FMSは2019年まで、毎年8月上旬あるいは8月中旬に米国カリフォルニア州サンタクララで実施されてきた。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の世界的な大流行(パンデミック)による影響で、2020年のFMS(FMS 2020)は開催時期が3カ月ほど延期されるとともに、バーチャルイベントとして開催された。
FMSは数多くの講演と、展示会で構成される。その中で、フラッシュメモリを含めた不揮発性メモリとストレージの動向に関するセッション「C-9: Flash Technology Advances Lead to New Storage Capabilities」が興味深かった。このセッションは4件の講演があり、その中でアナリストによる3件の講演が特に参考になったので、講演の概要をご紹介する。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
本シリーズの前々回から、半導体メモリのアナリストであるMark Webb氏の「Flash Memory Technologies and Costs Through 2025(フラッシュメモリの技術とコストを2025年まで展望する)」と題する講演の概要をご紹介している。前々回は、3D NANDフラッシュメモリ(以降は「3D NANDフラッシュ」と表記)大手の近況を、前回は中国の3D NANDフラッシュベンチャー、YMTC(Yangtze Memory Technologies Co., Ltd.)の現状を報告した。今回は、次世代あるいは近未来の3D NANDフラッシュの姿を解説しよう。
2021年の後半までに、全ての大手ベンダーは100層(ワード線の積層数)を超える3D NANDフラッシュの量産を立ち上げるとアナウンスしている。112層、128層、144層などの積層数を実現した超高層3D NANDフラッシュだ(前々回に詳しい)。現世代をひとくくりにすると「128層(128L)」世代と呼べる。
次世代は「176層(176L)」というのが業界の共通認識になりつつある。メモリセルアレイの記憶密度は128層に比べ、1.3倍強に増える。もちろん実際には176層だけというわけではない。NANDフラッシュメーカーは製造コストや歩留まり、性能などを勘案して具体的な積層数を決めることになる。
新世代が登場する周期は1年(12カ月)から2年(24カ月)、標準では1年半(18カ月)である。176層のさらに先は、商業的に可能な積層数としては256層(256L)が見えている。
メモリセルのデータ記憶技術には、フローティングゲート技術とチャージトラップ技術がある。大手メーカーのほとんどはチャージトラップ技術を採用している。フローティングゲート技術を唯一採用しているIntelは、SK hynixに3D NANDフラッシュ事業を売却することが正式に決まった(参考記事:「Intel、SK hynixにNANDメモリ事業を90億ドルで売却へ)。SK hynixはフローティングゲート技術で今後2世代から3世代は開発を継続すると表明しているものの、同社がフローティングゲート技術に見切りをつける事態は覚悟しておく必要がある。
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