Infineon Technologies(以下、Infineon)とNXP Semiconductors(以下、NXP)は、米国テキサス州オースティンにある半導体工場の生産を再開したと発表した。両社は、2021年2月の激しい寒波による被害を受けて運用を停止していた。
Infineon Technologies(以下、Infineon)とNXP Semiconductors(以下、NXP)は、米国テキサス州オースティンにある半導体工場の生産を再開したと発表した。両社は、2021年2月の激しい寒波による被害を受けて運用を停止していた。Infineonは、短期的に業績に影響が出る可能性があるが、通期の収益には影響しない見通しだという。NXPは、2021年第2四半期の収益に1億米ドルの影響が出る可能性があると述べたが、通期の会計年度への影響については明らかにしなかった。
Infineonは2021年3月19日(ドイツ時間)、オースティンでの生産を再開したと発表した。同社は「オースティンの製造施設は2021年2月15日の強制シャットダウン後、1週間でインフラが復旧した。現在、生産能力を強化している」と述べている。生産設備は運用可能な状態で、生産は再開されており、徐々に停止前のレベルまで高めていく予定だという。同社は、大寒波の結果、同地域が長期的な停電に見舞われたことで運用停止を余儀なくされた。
InfineonのCOO(最高執行責任者)を務めるJochen Hanebeck氏は、「オースティンの工場が運用停止に陥った後、再び稼働できたことをうれしく思っている。最新の評価から判断すると、当面は、顧客企業のニーズに完全に応じるのは難しいと考えている。この影響を受ける顧客企業には引き続き最新情報を提供する。オースティンで製造している製品のほとんどが、2021年6月に運用停止前の生産レベルに戻る予定だ。市場状況が逼迫し、それに伴って製造施設がフル稼働しているため、低下した生産量をすぐに回復させることはできないが、最高の品質と信頼性を備えた製品を提供することに引き続き注力していく」と述べている。
オースティンの工場では、多種多様なアプリケーションに使用される製品の製造およびテストを行っている。Infineonは今回の件で、2021年会計年度の第3四半期の収益に大きな影響を受ける見通しで、その額は数百万ユーロに及ぶと予想される。同社は、「ビジネスの概況とマイクロエレクトロニクスに対する根強い世界需要を考えると、通期の収益全体にマイナスの影響はないと予想している」と述べている。Infineonは2021年5月4日(ドイツ時間)に予定している決算報告時に、オースティンの状況に関する最新情報を提供するとしている。
一方のNXPも2021年3月13日(オランダ時間)、オースティンの製造施設で最初の運用を再開したという声明を発表した。大寒波によってライフラインが失われたことで、オースティンにあるNXPの2つの工場がダメージを受け、2021年2月15日から完全に運用が停止されていた。
影響を受けた工場では電力が復旧した他、クリーンルームの安全が確認されてから、2021年2月27日に再稼働した。以降、NXPは損傷の修復や、システムが受けた影響の調査、装置のキャリブレーションなどを実施した。現在、適切な品質を確保すべく仕掛かり品の評価を行っているさなかだという。今回の大寒波で、NXPのオースティンの工場ではおよそ1カ月分の生産量に相当するウエハーが失われた。
NXPのプレジデント兼CEOであるKurt Sievers氏は「2021年2月にテキサス州が経験した気象条件と停電はまさしく未曾有の出来事だった。オースティンの工場で生産を再開できたこと、そして、生産能力を寒波前のレベルまで回復させる計画が着実に進んでいることをうれしく思う。供給停止によって当社の顧客が影響を受ける可能性があると思われるが、われわれは複雑な製造プロセスの品質を維持しながら、フル生産に向けて尽力している。影響を受けた顧客に対しては引き続き最新情報を定期的に提供していく。また、潜在的な混乱を最小限に抑えるために休むことなく取り組んでいく」と述べた。
NXPは、既に発表していた2021年第1四半期の業績に関するガイダンスへの影響があるとは現時点では考えていないと述べた。また、同年第2四半期に関する財務ガイダンスはまだ提供していないものの、第2四半期の収益への影響について現時点では約1億米ドルと見込んでいる。NXPは2021年4月末に行う決算発表で、同年第1四半期の決算結果ならびに第2四半期の予測に関する詳細を発表する予定だ。
NXPのフロントエンドオペレーション担当シニアバイスプレジデントであるSteve Frezon氏は、同社のブログの中で、「(2021年2月後半に電力が復旧した後の)第2段階は、2つの工場を安定させることだった。安全システムを復旧しながら、加熱や冷却といったプロセスが確実かつ適切に機能するよう、数日間にわたり作業を行った。また、空調システムの検証を含め、さまざまな安全点検を実施した。それは、空気中のガス要素を検証するための極めて綿密な数日にわたる作業であった」と述べ、工場を再稼働する際の大変さを明らかにした。
Frezon氏は、安全性が確認されてから、工場内の全ての装置(工場1つにつき約1000台)のテストを開始したという。「安全な方法で全ての装置の電源を入れ、クリーンルーム内の全てのウエハーおよび仕掛かり品を検査し、物理的な損傷を調査した。装置は非常に高度で繊細なので、電源一つ入れるのも気を遣う必要がある。各装置のパーティクルも測定し、装置が、当社の品質基準を満たすレベルで生産できるかも評価する必要がある」(同氏)
Frezon氏によれば、大寒波は、製造装置への被害だけでなく、工場のインフラの部品にも被害を与えたという。こうした部品は工場の寿命に関わるものであり、取り外したり修理したりといったことは想定されていなかった。「こうした問題は、NXPだけでなくほとんどの半導体メーカーが直面したことがない、前例のないものだった。われわれのチームは、これらを解決するためのソリューションを迅速に開発した。その一例が、破損したエアハンドラーユニットの交換だった」(Frezon氏)
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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