ニコンと東北大学多元物質科学研究所は、新たに開発した「高水分散性ITOナノ粒子」と環境負荷が低い成膜方法「ミストデポジション法」を組み合わせて、低抵抗の透明導電性薄膜を製造することに成功した。
ニコンと東北大学多元物質科学研究所は2021年5月、新たに開発した「高水分散性ITOナノ粒子」と環境負荷が低い成膜方法「ミストデポジション法」を組み合わせて、低抵抗の透明導電性薄膜を製造することに成功したと発表した。
共同研究チームは、ソルボサーマル合成法において、粒子の表面に突起形状を設ける設計を行うことで、ITOナノ粒子の親水性を向上させることに成功した。従来品に比べ、粒子が長期的に安定して分散することを確認した。
ナノサイズのITO粒子を用いた塗布溶液は、有機溶剤や界面活性剤などの添加物が不要となる。このため、150℃以下の低温処理と大気圧下という環境で、低抵抗の透明導電膜を作製することができるという。
共同研究チームは今回、ITOナノ粒子を用いた塗布溶液と、大気圧成膜法の1つである「ミストデポジション法」を用いて、PEN(ポリエチレンナフタレート)基板上に150℃の低温プロセスで透明導電膜を作製した。この比抵抗を測定したところ、9.0×10-3Ω・cmであった。ミストデポジション法とは、原料溶液に数メガヘルツの超音波を印加して霧化させ、生成したミスト状の原料をガスにより搬送する気液混合プロセスの成膜法である。
PEN基板上に成膜をしたナノ粒子膜の断面を観察した。この結果、突起形状を有するITOナノ粒子膜は、従来品に比べぎっしりと詰まっていることを確認した。こうした特長により、今回実現したITO膜は、真空成膜法で製造したものに迫る、低い抵抗値を実現できることが分かった。なお、界面活性剤を含む市販品のITOナノ粒子膜に対しては3桁、東北大学が開発した従来粒子膜と比べても1桁程度、それぞれ低い値になったという。
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