東北大学と東京工業大学は、二次元有機/無機ハイブリッドペロブスカイトにおいて、キラリティの制御が可能な重元素からなる半導体材料を作製することに成功した。この半導体に光を照射すると、結晶のキラリティ制御により流れる向きが反転する電流が発生することも確認した。
東北大学金属材料研究所の谷口耕治准教授と宮坂等教授らは2021年3月、東京工業大学フロンティア材料研究所の笹川崇男准教授らと共同で、二次元有機/無機ハイブリッドペロブスカイトにおいて、キラリティの制御が可能な重元素からなる半導体材料を作製することに成功したと発表した。この半導体に光を照射すると、結晶のキラリティ制御により流れの向きが変わる電流が発生することも確認した。
研究グループは、有機物と無機物からなる層状ペロブスカイト型構造の半導体である二次元有機/無機ハイブリッドペロブスカイトに着目した。実験では、比較的大きな分子を組み込むことができる、二次元有機/無機ハイブリッドペロブスカイト型鉛ヨウ化物(2D-OIHP)を選択。これを用いてキラリティを自由に制御できる、新たな半導体を作製することに成功した。2D-OIHPは、無機層が鉛とヨウ素から構成されている。これら重元素の強い「スピン・軌道相互作用」が、電子状態に大きく影響を及ぼしていることを第一原理計算によって明らかにした。
開発した半導体に円偏光を照射したところ、外部電場を加えない(ゼロバイアス)状態でも、電流が発生することを確認した。「円偏光ガルバノ効果」と呼ばれるこの現象は、スピン・軌道相互作用により、光照射した物質がスピン分裂した電子状態になっている時に、励起される光キャリアの運動量分布に偏りが生じることに起因するものだという。特に、円偏光ガルバノ効果により発生する光電流の符号は、結晶のキラリティが右手系か左手系かによって反転することも分かった。
研究グループによれば、円偏光ガルバノ効果を活用することで、磁化反転を利用した新しい光制御型磁気メモリなどを実現することができるという。また、有機/無機ハイブリッドペロブスカイト系の化合物は、溶液プロセスで合成することが可能である。このため、印刷技術などと組み合わせれば、フレキシブルな光スピントロニクス材料として活用できるという。
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