Texas Insrtuments(TI)の日本法人である日本テキサス・インスツルメンツは2021年6月10日、産業用途向けにSAR(逐次比較型) A-Dコンバーター「ADC3660」ファミリーを発表した。産業用システムに要求されるリアルタイム制御へのニーズに対応すべく、高精度かつ高速なデータ収集の実現をうたう製品だ。
Texas Insrtuments(TI)の日本法人である日本テキサス・インスツルメンツは2021年6月10日、産業用途向けにSAR(逐次比較型) A-Dコンバーター「ADC3660」ファミリーを発表した。産業用システムに要求されるリアルタイム制御へのニーズに対応すべく、高精度かつ高速なデータ収集の実現をうたう製品だ。
TIの高速データ・コンバータ製品ライン・マネージャを務めるMatthew Hann氏は、サーマルカメラやグリッドインフラ、電源品質アナライザーなど、リアルタイム制御が必要な産業用システムは数多くあると語る。「例えばグリッドインフラでは、雷などが発生してシステム障害やシャットダウンが起きた場合、素早く検知して電流などを調整することが必要だ」(同氏)。そのためには、高精度で高速にデータを収集できるA-Dコンバーターが欠かせない。Hann氏は「産業システムの設計には、その他にも、正確性やノイズ、電力、サイズ、設計の簡素化といった課題がある」と続け、これらの課題に応えるA-DコンバーターとしてADC3660ファミリーを開発したと述べた。
ADC3660ファミリーでは、14/16/18ビットの分解能と、10M〜125Mサンプル/秒(SPS)のサンプリング速度を持つ8種類を用意した。
「ADC3683」は18ビットでデュアルチャネルの製品。サンプリング速度は65MSPS。最も近い競合品に比べて、サンプリング速度は4倍、チャネル密度が2倍だという。特に、ポータブル防衛無線などのナローバンド周波数の用途においてノイズ性能が向上しており、S/N比は84.2dB、ノイズスペクトル密度は−160dBFS/Hzとなっている。チャネル当たりの消費電力は94mWと低い。高精度のデータ収集を実現するので、例えばハンドヘルドのSMU(ソースメジャーユニット)などの用途に適しているとする。
「ADC3664」(14ビット/デュアルチャネル)は、超低レイテンシを特長とする。サンプリング速度は125MSPS。ADC3664では、1クロック(8ナノ秒)のレイテンシとなり、これは、パイプライン型、SAR型を含めた、サンプリング速度が同等レベルの競合製品に比べ、80%低いレイテンシだという。このように低いレイテンシにより、さまざまな産業用システムで高速デジタル制御ループの実現が可能となり、電圧や電流のスパイクを、より正確にモニタリングすることで、半導体製造システムなどのアプリケーションで精度が向上する。
「ADC3660」(16ビット/デュアルチャネル)は、低消費電力と低ノイズが特長だ。サンプリング速度は65MSPS。S/N比が82dBFSという超低ノイズ性能により、例えばソナーなどの用途でノイズを低減し、イメージ分解能を向上する。1チャネル当たりの消費電力は71mWで、これは同等の競合製品よりも65%低い。
ADC3660ファミリーには、設計の複雑さを軽減する機能も統合されている。例えば、オンチップのデシメーションフィルターによって、不要なノイズや高調波を容易に除去し、S/N比とSFDR(スプリアスフリーダイナミックレンジ)を最大15dB向上できる。さらに、32ビットのNCO(数値制御発振器)ブロックを含むDDC(デジタルダウンコンバーター)を内蔵していることから、ナイキストゾーン内の任意の周波数のみを選択して変換できるので、必要なプロセッサリソースを低減できる。これらの機能により、FPGAではなく、Armベースのプロセッサなど安価なプロセッサで十分に対応できるようになるので、システムコストを削減できるとする。
ADC3660ファミリーのパッケージは、5×5mmのWQFN。「ADC3541」以外は既に供給中で、ADC3541については、2022年第1四半期から量産出荷を開始する。1000個購入時の単価は14.50〜99.50米ドル。評価モジュールは249米ドルで提供している。
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