日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2021年2月18日、同社の事業戦略について、オンラインによる記者説明会を開催した。日本TIの社長を務めるSamuel Vicari氏は、「長期的に安定供給を可能とする製造戦略」や「新たなオンライン購入サービスの開始」により、顧客支援のさらなる強化を打ち出す。
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2021年2月18日、同社の事業戦略について、オンラインによる記者説明会を開催した。日本TIの社長を務めるSamuel Vicari氏は、「長期的に安定供給を可能とする製造戦略」や「新たなオンライン購入サービスの開始」により、顧客支援のさらなる強化を打ち出す。また、注力分野の1つである車載システム向けの製品戦略などを説明した。
新型コロナウイルスの感染拡大や自然災害の発生などにより、半導体の需給バランスが崩れ、自動車業界では生産ラインが一時停止するなど、大きな影響を受けている。こうした中でもTIは、「現在も、ほぼ顧客の要求に応えられている」(Vicari氏)と話す。
それは製造を第三者に依存することなく、日本の美浦工場や会津工場をはじめ、米国、ドイツ、中国など全世界に自前で14カ所の製造拠点を保有しているからである。しかも、「製造する製品の75%は、複数の製造拠点から調達することが可能」(Vicari氏)だという。
こうした製造戦略によって、不測の事態が生じた場合でも、長期間にわたり安定した製品の供給を可能としている。特に車載システムや産業機器を手掛ける日本の顧客からは、これらの対応が高く評価されているという。「生産能力の増強に向けた投資は2021年も継続して行う」(Vicari氏)と話す。
TI製品をオンライン購入する際の、新たなサービスも追加した。TI製のアナログ製品や組み込みプロセッシング製品をTIのウェブサイトより購入する場合、日本円での支払い(JCB/Visaクレジットカードを含む)を可能にした。日本円で購入すれば、通関手続きが不要となるという。
5万5000点を上回る正規TI製品のうち、そのほとんど(99%)をオンライン価格で安価に購入できるのも、顧客にとってはメリットだ。また、最大30製品を一括で注文したり、量産前のTI製品を入手したりすることも可能である。製品の供給形態もカット済みテープや全量リール、カスタム数量リールなど、顧客のさまざまな要求に対応していく。
自動車業界は、「電動化」「自動化」「コネクテッド」といったトレンドによって、大きく変わろうとしている。安全性やセキュリティ、環境問題などを背景にその動きは加速する。こうした中でTIは3つの視点で車載システム向けの事業に取り組む。
その1つは、革新的な製品である。7000種類にも及ぶ車載アナログ製品や組み込み製品を用意している。近年は年間500種類の車載ICを開発しているという。もう1つは、高度なシステム技術である。150種類の車載システムに対応するレファレンスデザインを提供する。これまで用意したレファレンスデザインの数は350種類以上にもなる。しかも、これらはIATFやISO、OHSASなどの品質要件に適合しているという。さらに、長期にわたり安定して製品を供給できる柔軟な製造/供給体制も、同社の強みとなっている。
自動車メーカーは、温室効果ガスの削減を目指す中で、48Vモーターを採用したマイルドハイブリッドカー(MHEV)などの開発に取り組んでいる。TIはこのMHEVに向けたBLDCモータードライバーICを新たに投入する予定である。
新製品は、従来の3相48V BLDCモータードライバーに比べて、プリント基板の占有面積を最大30%削減できるという。また、動作温度範囲が−40〜150℃と、最も厳しいグレード0の認定を受けた製品。機能安全にも準拠しておりASIL DレベルのMHEVシステムを実現できるという。
電気自動車(EV)市場には、既存の自動車メーカーではない新規の企業も参入を表明している。Vicari氏は、「革新的な製品や高度なシステム技術、柔軟な供給体制という、3つの柱に基づいて事業を展開しているTIは、市場が大きく変化する中で、いい位置につけている」と述べた。
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