芝浦工大、ウェアラブル体温発電素子を安価に製造:断熱にメラミンスポンジを採用
芝浦工業大学は、わずかな温度差でも安定して発電できる「ウェアラブル体温発電素子」を開発した。これを低コストで製造する方法も同時に開発した。
芝浦工業大学工学部の苗蕾教授は2021年7月、わずかな温度差でも安定して発電できる「ウェアラブル体温発電素子」を開発したと発表した。これを低コストで製造する方法も同時に開発した。
ウェアラブル電子機器向け電源として、装着した人の体温と外気温の温度差を利用して発電するフレキシブル熱電発電機(w-TEG)が注目されている。しかし、従来の熱電変換モジュールは、「熱電材料の発電効率が低い」「重い」「柔軟性に欠ける」といった課題があった。「着用時の温度差が小さい」ことなども、w-TEGの普及を妨げていたという。
苗教授は今回、有限要素シミュレーションを活用し、最適なw-TEGを設計した。作製した「π型w-TEG」は、熱伝導率が0.03W/mKというメラミンスポンジを封止材として採用している。熱伝導率が極めて低いメラミンスポンジの断熱効果により、熱電発電機が外気に接する面と人体表面との間に生じる温度差を、安定して維持することが可能になった。
メラミンスポンジの断熱効果で大きな温度差を維持 出典:芝浦工業大学
実証実験により、5Kというわずかな温度差で、静止時(風速毎秒ゼロメートル)は7μW/cm2、歩行時(風速毎秒1m)には29μW/cm2の発電が得られることを確認した。これまで用いていたPDMS(Polydimethylsiloxane)と呼ばれるシリコーンの一種に比べ、柔軟性に優れ、曲げ張力は5分の1程度であった。
今回試作した熱電発電機は、面積が3.61cm2、厚みは5mm、量さ1.75g、曲げ張力は0.75g。これを用いてスマートウォッチを駆動させることに成功した。製造コストはわずか6.5米ドルだという。
左は静止時と歩行時における出力電圧と出力密度、右は装置の柔軟性を示した例 (クリックで拡大) 出典:芝浦工業大学
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