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英当局、「NVIDIAのArm買収は技術革新を阻害する」との見解を発表慎重な調査が必要との結論(1/2 ページ)

英国の競争・市場庁(CMA:Competition and Markets Authority)は、NVIDIAによるArm買収に関する報告書をまとめ、「競争上の懸念の他、技術イノベーションが阻害される可能性もあるため、詳細な調査を行う必要がある」との見解を明らかにした。

» 2021年08月25日 14時30分 公開
[Nitin DahadEE Times]

NVIDIAの「解消措置」では懸念は払しょくされない

 英国の競争・市場庁(CMA:Competition and Markets Authority)は、NVIDIAによるArm買収に関する報告書をまとめ、「競争上の懸念の他、技術イノベーションが阻害される可能性もあるため、詳細な調査を行う必要がある」との見解を明らかにした。

 CMAは2021年7月に、英国の行政機関であるデジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS:Department for Digital, Culture, Media and Sport)に概要を提出した後、今回の報告書を発表した。その中で、「NVIDIAがArmを買収した場合、ArmのIP(Intellectual Property)へのアクセスが制限され、競合他社に悪影響が及ぶ可能性がある」と警告している。NVIDIAは、競合他社がArm技術にアクセスできるようにすることを確約する「行動的問題解消措置(behavioral remedy)」を提案したが、CMAは、「そのような措置で懸念を解消することはできない」と述べている。

CMAのAndrea Coscelli氏

 CMAの最高責任者であるAndrea Coscelli氏は、「NVIDIAがArmを管理することによって、NVIDIAの競合企業が重要な技術へのアクセスを制限され、最終的には数多くの重要な成長市場全体でイノベーションが阻害されるという、深刻な問題の発生が懸念される。その結果、消費者たちが新製品を入手できなくなったり、製品価格が高騰したりするなどの可能性がある」と述べている。

 さらに同氏は、「半導体技術市場は今や数十億米ドル規模に達し、さまざまな企業や消費者たちが業務や日常生活で使用している製品において、必要不可欠な存在となっている。例えば、重要なデータ処理やデータセンター技術は、経済全体のデジタルビジネスをサポートしている他、ロボットや自動運転車などの成長市場にとって、AI(人工知能)技術が将来的に発展することは非常に重要である」と続けた。

 CMAが2021年1月にフェーズ1の調査を行い、パブリックコメントを募集したところ、さまざまな市場において懸念を抱いている消費者や競合他社から、根拠のある詳細なコメントが大量に届いたという。これに基づき、「NVIDIAがArm買収によって得られる能力は、重大な競争上の懸念を生じさせ、NVIDIAのライバル企業に対する阻害要素になる」という結論に至った。特に懸念されているのが、ArmのCPU IPに対するアクセスが制限され、関連製品の相互運用性が損なわれる可能性があるという点だ。こうした動きにより、NVIDIAがサプライチェーンの下流においてメリットを享受し、競合他社を犠牲にすることで利益を増加させる可能性があるとする。

 CMAは、「データセンターからゲーム用アプリケーションに至るさまざまな世界市場において、CPUやインターコネクト製品、GPU、SoC(System on Chip)などの供給が、(NVIDIAにより)“差し押さえられる”ことで、競争上の重大な懸念が生じる。競争とイノベーションが低下すれば、製品価格の上昇や品質低下の恐れがある」と警告する。

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