2021年になってRISC-VベースのCPUを搭載した評価ボードや実製品が多数出回るようになってきた。RISC-VはIntelのX86、Armコアに続く“第3のCPU”として、既に多くの企業が参画している。シリコン開発、IP化の整備と販売、評価キットのサポートなどさまざまなレイヤーでがRISC-V関連のビジネスが拡大しつつある。
2021年になってRISC-VベースのCPUを搭載した評価ボードや実製品が多数出回るようになってきた。RISC-VはIntelのX86、Armコアに続く“第3のCPU”として、既に多くの企業が参画している。シリコン開発、IP化の整備と販売、評価キットのサポートなどさまざまなレイヤーでがRISC-V関連のビジネスが拡大しつつある。弊社も2017年からRISC-V Internationalのシルバースポンサーを務めており、RISC-Vのビジネス全体像をモニターしつつ、さまざまなコミュニケーションを図っている。
図1は、RISC-Vを用いた実シリコンを開発し販売する、“RISC-Vの総本山”である米SiFiveがリリースしたLinux PC用ボード「HiFive Unmatched」である。詳細仕様はぜひSiFiveのWebサイトでご確認いただきたい。
シリコンは16nmで製造されている。3世代ほどの前のプロセスで製造されたもの(5/7nmが最先端でその前は10/12nm、14/16nmは3世代前とカウントする)なので、性能は3年ほど前に最先端だったArmベースのCPUをターゲットとするチップとなっている。
SiFiveは次世代のCPU(「U84」)の目標仕様や製造プロセスも公開しており、徐々にArmとの性能の差が縮まっているようだ。今回取り上げたHiFive Unmatchedのメインプロセッサ「FU740」には、「U74」という、Arm「Cortex-A55」(現在も非常に多くのプロセッサの高効率CPUとして採用されている)相当のCPUが4基、システム制御用のCPU「S7」が1基と、計5基のCPUが搭載されている。DDR4のインタフェースやEthernetコントローラーも同シリコンに搭載されている。弊社は詳細で鮮明なチップ写真を保有しているが、本連載では加工した画像を掲載する。
SiFiveは2021年4月、ルネサス エレクトロニクスの次世代車載向けCPUで提携すると発表した。また、真偽が明らかになっていないが、今初夏にはIntelがSiFive買収を検討していることが報道されている。SiFiveは、非常に注目度が高い新興メーカーの1社なのだ。
図2は中国ALLWINNERのプロセッサ「D1」が搭載されているLinuxが動作するシングルボードコンピュータである。ALLWINNERのプロセッサは従来Armコアを用いたものが多数販売されており、有名なところでは、2016年に任天堂が発売した「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」や、2017年に発売した「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」に採用されている。KONAMIが2020年に発売した「PCエンジン mini」にもZUIKIのプロセッサが採用されているが、中身はALLWINNER社製シリコンであった。
日本でも身近な機器に搭載されているALLWINNERのプロセッサだが、2021年になってArmコアではなくRISC-Vコアが活用されたD1がリリースされた。といってもArm離れしているわけではなく、Armベースの製品との併売が始まっている。
ALLWINNERのような大きな実績を持つ半導体メーカーが、RISC-Vコアを採用したことで、RISC-Vベースのチップの実績も高まっていくことは間違いない。
D1に搭載されるRISC-VコアはALLWIINERが開発したものではなく、中国のT-Head(Alibaba系半導体メーカー:中国CPUメーカーC-SKYの流れを持つ)が開発したもの。実力のあるT-HeadのコアをIPとして活用することで、生産性を高めている。1つのメーカーがCPUからチップまで開発するとなると膨大な費用と人員を要してしまう。そのため中国国内にもリファレンスとなるCPUコアを開発し、提供するメーカーが存在するわけだ。日本には現在、リファレンスコアを大々的に販売するメーカーがない。このあたりが普及や実績拡大のなかなか進まない日本との差であるだろう。
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