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» 2021年10月06日 09時30分 公開

充放電過電流検出電圧精度±0.75mVの1セルバッテリー保護ICスマホの急速充電ニーズの課題に対応

エイブリックは2021年9月28日、「世界最高精度」(同社)という充電/放電過電流検出電圧精度±0.75mVを実現した1セルバッテリー保護IC「S-82P1A/S-82P1Bシリーズ」の販売を開始した。ハイエンドスマートフォンのバッテリー回路向けを主なターゲットに、今後3年間で3億個の販売を目指す。

[永山準,EE Times Japan]

 エイブリックは2021年9月28日、「世界最高精度」(同社)という充電/放電過電流検出電圧精度±0.75mVを実現した1セルバッテリー保護IC「S-82P1Aシリーズ」「S-82P1Bシリーズ」の販売を開始した。ハイエンドスマートフォンのバッテリー回路向けを主なターゲットに、今後3年間で3億個の販売を目指す。サンプル価格はいずれも120円。

大容量化するスマホ、急速充電ニーズの課題に対応

S-82P1Aシリーズ 出所:エイブリック

 近年、スマートフォンは高機能化に伴って大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載する傾向にあり、その急速充電のニーズから、充電電流を大きくしたいという要望が高まっている。しかし、充電電流が増えると保護回路基板上にある電流検出抵抗の発熱が大きくなるため、発熱を抑えるために電流検出抵抗の抵抗値を下げる必要がでる。

 ただ、単純に抵抗値のみを下げるだけでは検出電流値のばらつきが大きくなり、安全性が確保しにくくなるといった課題が生じる。同社が開発したS-82P1A/S-82P1Bシリーズは、充電/放電過電流検出電圧精度を「世界最高精度」(同社)の±0.75mVにまで高精度化することで、こうした課題への対応を可能にしたという。また、過充電検出電圧精度も±15mVと「業界トップクラス」(同社)だとしている。

 その具体的な内容を一般的なハイエンドスマホの電池パック回路の例(下図)で説明する。下図内の式の通り、現在市場で多く使われているという過電流検出電圧精度が±1.5mVの保護ICの場合、3mΩの電流検出抵抗を単純に1.5mΩのものに変えると検出電流値の最大値、最小値の幅が広がり、最大発熱量は半減とまではいかない。S-82P1A/S-82P1Bシリーズでは、充電/放電過電流検出電圧精度±0.75mVを新たに達成したことから、検出電流値のばらつきを抑え、最大発熱量を半減することができている。

一般的なハイエンドスマホの電池パック回路の例で、2つの保護ICを用いた2重保護回路となっている。充電、放電時には回路内のFETや電流検出抵抗が発熱元となるため、その抵抗値を下げることが求められるが、電流検出抵抗は単純に抵抗値だけ下げてしまうと弊害が出る。(5)の式のように、S-82P1A/S-82P1Bシリーズではその課題を解決している[クリックで拡大] 出所:エイブリック

 またスマホが該当する安全規格「IEC(UL)62368」の電池パックへの要求において、「8A以上の放電電流が流れた場合、5秒以内に電流を遮断する必要」(Limited Power Source:LPS)がある。

 こちらも下図のように、過電流検出電圧精度が±1.5mVの保護ICの場合、3mΩの電流検出抵抗を単純に1.5mΩのものに変えると(放電過電流検出電圧は前者が22mV、後者が11mVに設定)、検出電流値の最大値が8.3Aとなり規格を満たすことができなくなる。この場合、従来は放電過電流検出電圧値の設定を10mVに下げるといった対応をしていたが、S-82P1A/S-82P1Bシリーズを用いれば、11mVのままで規格をクリアできるという。

安全規格への対応について。2重保護回路が必要な他、8A以上の放電電流が流れた場合に5秒以内に電流を遮断する必要がある。(10)がS-82P1A/S-82P1Bシリーズを用いた場合の式だ[クリックで拡大] 出所:エイブリック

 S-82P1Aシリーズにはさらに、CTL端子が備わっており、外部からの信号を入力することで、強制的に電池パックの充放電を停止することが可能だ。具体的な用途としては、PTCサーミスターを接続することで過熱保護機能を実現することなどができるという。

 その他、S-82P1A/S-82P1Bシリーズの主な仕様は下表の通りだ。

過充電検出電圧 3.50〜4.80V ±15mV
過放電検出電圧 2.00〜3.00V ±50mV
放電過電流検出電圧1 0.003〜0.100V ±0.75mV
放電過電流検出電圧2 0.006〜0.100V ±2mV
負荷短絡検出電圧 0.020〜0.100V ±5mV
充電過電流検出電圧 −0.100〜−0.003V ±0.75mV
動作時消費電流 最大4.0µA
パワーダウン時消費電流 最大50nA
最大定格 28V
動作温度 −40〜+85℃
パッケージ S-82P1Aシリーズ:HSNT-8(1616)1.6×1.6×t0.4mm max.
S-82P1Bシリーズ:SNT-6A 1.57×1.8×t0.5mm max.

 同社は、バッテリーの大容量化が進むハイエンドスマホをメインターゲットとしつつ、タブレット端末やヘッドセット、スマートウォッチ、活動量計、ワイヤレスイヤフォンなどの製品への搭載もねらう。

 今回の高精度化について説明担当者は、「回路技術、検査測定技術のノウハウの蓄積によるものだ。数字で見れば0.数ミリボルトといった小さな改善だが、われわれの日々の実験の積み重ねによって初めて実現できた」と述べた。なお、同社は今後もさらなる高精度化に向けて開発を進めているという。

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