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半導体製品ライフサイクルの特長と有効な製造中止対策半導体製品のライフサイクルに関する考察(4)(2/3 ページ)

» 2021年10月08日 11時30分 公開

半導体のライフサイクルに影響を及ぼすものは

 それでは、半導体のライフサイクルを左右するものにはどういったものがあるのだろうか。一般的に、半導体製品は、以下の手順(図2)で製造される。

図2:半導体製品の製造工程

 この製造工程上において、以前はすべて自社内で完結していた。しかしながら図3に示すように、最近では、その工程ごとに外部の会社に委託する傾向が強くなっている。

図3:製造工程の分担化[クリックで拡大]

 つまり、半導体製品の設計からテスト/品質検査まで自社内で行っていたものが、現在ではウエハー製造や組み立てなどだけでなく、設計を含めて外部に委託する企業も出てきている。

 製品によって最適な製造工場を選択し使用するため、高性能・/高品質製品の開発を最適に実現できる。自社に製造設備を持つ必要がなくなり、固定資産などの財務上のリスクも軽減させることができる。そうして、開発期間の短縮、工程中のリスク軽減へとつながる。

 これは一見、良いこと尽くしのように見える。だが、大きなリスクも存在している。それぞれの工程で委託している会社は、その分野に特化していることから、より大きな利益を得るために、利益が大きいものを優先的に製造することになる。使用している設備に対しても、利益を生みやすい設備へ計画的に切り替えている。そのために、古い技術を使用した製品への対応が難しくなり、半導体製品の長期製造も難しくなり、製品のライフサイクルに影響を与えてしまうことになる。

 次に挙げられる点としては、業界再編ともいわれるような、半導体メーカーの合併や吸収による影響だ。参考までに、2010年から2019年までの間、各年で実施された合併や買収時に発生した金額(単位:10億米ドル)を以下の表に示す。

半導体企業の買収/合併額(年別)

 この表からも、ここ数年の間で多くの合併や買収が行われていることが分かる。では、これがどういった影響を与えるのだろうか。

 各企業は、企業買収や合併により、「商圏や販路、そして事業規模を拡大させる」ことを目指し、「ノウハウや技術を取り込むことにより、より効率的な事業展開や競争力強化を図る」ことを目指す。そうして半導体市場でのポジションをより強いものにしていく。

 合併や買収により、企業としては大きくなるが、これまでの業務内容を見直し、合理化やコストダウンを図る必要が出てくる。この対象となるものが、設備であったり、取り扱い製品であったりする。さらにこの企業買収や合併だが、その目的から、これまで競合だった会社が合併するケースが多く見受けられる。合併を機に、製造設備を売却し、合併後は製造を外部に委託する方向に移行する企業も増えている。つまり、

  • 合併に伴い、重複した製品または投資対効果の低い製品は製造中止(EOL)になってしまう
  • 製造設備を売却することで、その工場でしか製造できない製品は製造中止(EOL)になり、後継製品も出せなくなってしまう
  • 事業の合理化のために、将来性を見いだせない製品群を、その部門ごと外部に売却してしまい、継続して製造することができなくなった
  • 必要以上の在庫を持つことが困難となり、製造中止になった時に最低限必要な数量以上の在庫を持つことができなくなった
  • 製造委託していた企業において、使用していた製造ラインをすべて廃棄処分にすることが決定してしまい、継続して生産することができなくなった

といった状況が起こり得る。こうしたことから、昨今の半導体製品のライフサイクルが短くなってきている。

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