メディア

半導体製品ライフサイクルの特長と有効な製造中止対策半導体製品のライフサイクルに関する考察(4)(3/3 ページ)

» 2021年10月08日 11時30分 公開
前のページへ 1|2|3       

半導体製品の製造中止問題に対応するには

 半導体製品の製造中止について、その手順について、まず考える。JEDEC(J-STD-048: Notification Standard for Product Discontinuance)に、製造中止に関する規格が示されている。それを図4に示す。

図4:製造中止プロセス

 図4に示すように、製造中止の通知を出した後、一定期間、最終オーダーを受け付ける。そうして受け付けたオーダーに従って、最終生産を行い、顧客に納入する。納入完了を以て、対象となる製品を製造中止とする。この時の、最終納品までの期間としては、最短で1年、一般的な期間としては、2年程度となっている。つまりこのEOL通知が来た時から1年以内に、最終必要数量を算出し、それを発注することになる。対象になる最終製品が、顧客との契約に基づき製造されている製品であり、契約で総生産数が決められているような場合以外は、それまでの出荷傾向や市場の動向、後継機種の開発状況などを見極めながら、最終的に必要になりそうな数量を決めることになる。

 しかしこの時、「どの程度の数量を安全在庫とみるのか」その見極めが非常に難しくなることも事実だ。つまり、「もうこれ以上生産しないので必要以上の在庫は持ちたくない」という気持ちと、「もしかすると、何かの理由や影響で想定以上の在庫が必要となるかもしれない」という気持ち、また、アプリケーションによっては「契約しているメンテナンス期間中に、想定以上の問題が発生した時、交換部品が不足してしまう可能性がある、その場合どうしたらよいか」という懸念点も出てくる。こういった心配点をなくすために、必要以上(場合によっては必要数の数倍以上)の半導体製品を最終オーダーとして発注してきた企業も少なくないはずだ。この対策によって、次機種への移行がスムーズに進めば、事業としては問題ない。

 しかしながら、予測通りに収束させられないケースも出てくる。例えば、最終ユーザーからの需要の急激な増加や、次機種の開発遅れによる予定期間を超えた製造継続、メンテナンスが必要な設備における不具合の増加などである。こういったケースでは往々にして予想数量を超える数量が必要になってしまう。このような状況になってしまうと、オリジナル半導体メーカーは製造中止しており、追加発注はできない。契約している販売代理店にも在庫はなく、追加生産ができない状況に陥ってしまい、最終顧客の要求納期に間に合わない事態に陥ってしまう。

 企業としては、この状況だけは何とか回避したいと考えるはずだ。これまでは、契約した販売代理店経由で在庫を探していたが、現在は、インターネットも環境も充実しており、世界中の情報を入手することができるようになっている。そのため、インターネットから入手される情報を基に、半導体を販売しているサイトを発見し、そこにある半導体製品を購入しようと考える。しかしながら、そういった販売会社の中には、企業情報もなく、所在地も電話番号もない会社もある。はたしてそういった会社から購入しても良いのだろうか。できれば避けてほしいと思う。

 ここで、WSC(世界半導体会議)が提言している文章を示す。

  • オリジナル半導体メーカー(OCM)から直接、またはOCMの認定正規販売代理店の1つから製品を購入してください
  • 製品変更通知または製造中止案内を受け取った時どうするかを、事前に計画しておいてください
  • 必要に応じて、OCMに認定された「アフターマーケットディストリビューター」を使用するようにしてください

以上のことからも、オリジナル半導体メーカー認定の正規販売代理店からの購入を基本姿勢としていただきたい。半導体製品に限らず、製造中止となることを止めることはできない。必要なのは、そのタイミングが合わない時に、どうするかだと思う。その方法だが、以下の2つが考えられる。

  1. 廃棄することを前提として、生涯使用予定数量の数倍を確保する
  2. いずれは在庫がなくなることを前提に、継続的に供給可能な、オリジナル半導体メーカー認定の販売代理店のサポートを受ける

 この2つだが、できれば後者の選択をぜひ検討していただきたい。つまり、オリジナル半導体メーカーの在庫がなくなっても、継続的に供給する手段を持っている、オリジナル半導体メーカー認定の販売代理店を利用するという選択だ。この選択であれば、例え在庫がなくなっても、継続的に生産するなりして供給を止めることがない。これにより、余分の在庫を持つ必要がなくなる。

最後に

 半導体応用機器メーカーは、半導体製品の製造中止や廃品種に対して積極的にアプローチすることにより、生産中断のリスクを軽減し、偽造部品に対しても強い立場を取ることができる。半導体製造中止品の代替ソリューションは、さまざまな障害を引き起こす可能性があり、時には隠れた不整合をもたらす。その中には明らかに認識できるものもあれば、診断が難しいものもある。これらの障害を排除するためには、高い信頼性と費用対効果の大きい選択が必要である。

【著:Rochester Electronics, Ltd.日本営業本部

連載「半導体製品のライフサイクルに関する考察」バックナンバー

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.