ルネサス エレクトロニクスは2021年10月6日、オンラインで記者説明会を実施。同社オートモーティブソリューション事業本部の事業本部長、片岡健氏が車載事業戦略について語った。
ルネサス エレクトロニクスは2021年10月6日、オンラインで記者説明会を実施。同社オートモーティブソリューション事業本部の事業本部長、片岡健氏が車載事業戦略について語った。
片岡氏はまず、自動車市場におけるメガトレンドとして、世界的な「ゼロエミッション」への取り組みの加速を背景とした「電動化」、安全、セキュリティへの要求の高まりによるADAS(先進運転支援システム)などの「自動化」、そして快適、利便性の追求および車載のE/E(電気/電子)アーキテクチャ進化によって求められる「コネクテッド」の3つに言及。電動車(xEV)、ADAS、ゲートウェイの各アプリケーション市場規模の2021〜2027年における年平均成長率(CAGR)を見ると、xEVが23%、ADASが12%、ゲートウェイが10%と、それぞれ急成長が予測されていることを挙げ、「当然ここにフォーカスしていく」と説明した。
これらの市場成長は特に中国、インドといった新興地域の伸びが大きい。同社によると各アプリケーション市場規模の2021〜2027年のCAGRを中国、インドの2国に限ってみると、xEVで24%(他地域は21%)、ADASで21%(同9%)、ゲートウェイで15%(同9%)となっている。片岡氏は、「新興地域は特に最初からゾーン型※)のE/Eアーキテクチャを採用するような場合もあり、伸びが大きい」と語っていた。
同社は、既存アプリケーションおよび既存顧客(先進国地域)については「大切なビジネス基盤として引き続きフルにサポートする」としつつ、上記の新アプリケーションおよび新興地域で、積極的に事業を拡大していく方針だとしている。
※)現在主流のE/Eアーキテクチャは、多数のECUを用途に応じて車内各所に配置する「分散型アーキテクチャ」だが、今後は、クルマ全体の制御を一箇所に集中させた「集権型アーキテクチャ」、さらに、次の段階として、クルマを複数のゾーンに分割してゲートウェイを設置し、各ゾーン内でECUやセンサーを接続する「ゾーンアーキテクチャ」へと進化していくとされている
こうした市場環境のなか、同社は以前からの強みであるマイコンやSoC(System on Chip)をパワートレインやボディー、シャシーといった車両制御の領域から、ADAS/自動運転、ゲートウェイおよびドメインコントロールユニット (DCU)の領域へと拡大してきた。さらに、Intersil、IDTそして直近のDialog Semiconductor買収によってアナログポートフォリオを拡充したことで、xEVやパワーディストリビューションネットワークの領域において、「デジタルとアナログを組み合わせたトータルなソリューション」の提供を強みとしていく。また、片岡氏は、「顧客はソフトウェア開発が複雑になっているため、サポートが重要だ」とも述べ、ソフトウェアの開発環境やウィニングコンビネーションの拡充を進めていくことも強調した。
下図右は、同社のアナログ製品ポートフォリオを示したものだ。直近のDialog買収によって、PMICやCMIC(Configurable Mixed-Signal IC)、LEDドライバ、ハプティクスドライバ、コネクティビティ(BLE)など、製品ポートフォリオが大きく拡大した。
次に同社は、E/Eアーキテクチャ戦略について説明した。競合他社の多くが、得意な領域をプラットフォームとして一体で提供する水平分業型をとる中、同社は「当社は大手自動車メーカーなどのパートナーとして、エコシステムの中で生きていく」としており、垂直統合型プラットフォーマーの確立に貢献していく方針だ。
片岡氏は、「(自動車メーカーやティア1は)自分たちのソフトウェアのプラットフォームを作ろうとしているが、ハードウェアおよびソフトウェアの開発環境はできるだけハードウェアメーカーに任せ、自分たちはソフトウェアのアプリケーションに集中したいと考えている。われわれは、スケーラブルな製品展開と、統合された開発環境を提供する」と述べた。また、顧客とともに将来のロードマップやテクノロジートレンドを共有したうえで、拡張性まで含めた「ASICタイプ」の製品開発も進めるという。
一方で水平分業型モデルでも、アクチュエータの分野でウィニングコンビネーションを標準のターンキーソリューションとして提供していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.