今回は、フロントエンド3Dとバックエンド3Dを解説する他、TSMCが「CSYS(Complementary Systems, SoCs and Chiplets integration、シーシス)」と呼ぶソリューションを紹介する。
高性能プロセッサとその関連技術に関する国際学会「Hot Chips」がことし(2021年)8月22日〜24日にオンラインで開催された。「Hot Chips」は高性能プロセッサの最新技術情報を入手できる貴重な機会として知られている。会期は3日間で、初日が「チュートリアル(Tutorials)」と呼ぶ技術講座、2日目と3日目が「カンファレンス(Conference)」と呼ぶ技術講演会となっており、講演会とは別にポスター発表の機会も用意される。オンライン開催となったことしは、あらかじめ録画されたビデオをプログラムに沿って公開する形式となった。参加登録者は開催後も一定の期間は、オンデマンドで講演を聴講できる。
初日の「チュートリアル(Tutorials)」では、13件の講演が実施された。その中で「先進パッケージング技術」に関する講演「TSMC packaging technologies for chiplets and 3D(チップレットと3次元集積に向けたTSMCのパッケージング技術)」が極めて興味深かった。講演者はTSMCで研究開発担当バイスプレジデント(現在はシステム集積化手法開発担当バイスプレジデント)をつとめるDouglas Yu氏である。
そこで本講演の概要を前回から、シリーズでお届けしている。なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
前回は、講演のアウトラインを説明するとともに、TSMCが「3D Fabric」と呼ぶ2.5/3次元(2.5/3D)の集積化技術の概要を簡単に説明した。「3D Fabric」は2020年8月にTSMCが呼称し始めたブランド名で、過去に同社が開発してきた複数の先進パッケージング技術を総称するものだ。
前回でも述べたように、「3D Fabric」はフロントエンド3D(FE 3D)とバックエンド3D(BE 3D)の2つの技術で構成される。フロントエンド3D(FE 3D)には、「SoIC(System on Integrated Chips)」と呼ぶシリコンダイの積層接続技術がある。シングルダイのシステムLSI(SoC:System on a Chip)を意図的に複数のダイ(チップレット)に分割する「チップレット化」を支える技術だ。最近になって量産が始まった。
バックエンド3D(BE 3D)には、複数のシリコンダイを高密度に相互接続する2つの技術がある。1つはモバイル向けに開発した「InFO(Integrated Fan-Out、インフォ)」、もう1つは高性能コンピューティング(HPC)向けに開発した「CoWoS(Chip on Wafer on Substrate、コワース)」だ。いずれも豊富な量産実績を有する。
フロントエンド3DのSoICには、大別すると2つの構成がある。1つは製造技術世代の異なる複数の小さなシリコンダイ(ミニダイ)で1つのシステム(従来のシステムLSIに相当)を実現する構成(チップレット構成)だ。最先端であるN世代で製造したミニダイや1つ前の世代であるN-1世代、さらに前の世代であるN-2世代で製造したミニダイなどを組み合わせる。
もう1つは、プロセス技術の異なる複数のシリコンダイで1つのモジュールを実現する構成(ヘテロジニアス構成)である。例えばロジックのプロセス技術で製造したシリコンダイと、メモリのプロセス技術で製造したシリコンダイを組み合わせる。
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