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» 2021年10月20日 13時30分 公開

ADASの安全性向上に力を発揮するARディスプレイ「AR HUDはなくてはならないものに」

自動運転車(AV)の時代がさらに近づくにつれ、安全性と正確性は間違いなく最優先事項になる。拡張現実型ヘッドアップディスプレイ(AR HUD)は、AVがどのようにわれわれの日常生活の一部となり、安全性を高めるかにおいて役割を果たすようになるだろう。

[Junhwan Kim(StradVision),EE Times]

 自動運転車の時代がさらに近づくにつれ、安全性と正確性は間違いなく最優先事項になる。不具合は許されない。自動運転車に発生するあらゆる安全性の問題は、その導入時期を確実に遅らせるからだ。そのようなことを望む関係者は、業界には1人もいないはずだ。

 拡張現実型ヘッドアップディスプレイ(AR HUD)、ドライビングエクスペリエンスの安全性と品質を高める次世代フロントガラスディスプレイ技術といった数多くの重要な技術は、自動運転車がどのようにわれわれの日常生活の一部となり、安全性を高めるかにおいて役割を果たすようになるだろう。

AR HUDは、速度などの動作データを表示するだけではない 出所:StradVision

 AR HUDは、センサーを介してリアルタイムで集めたデータに基づき、ナビゲーションやADAS(Advanced Driver Assistance System)からのさまざまな警告など極めて重要な道路情報をフロントガラスに映し出す。この高度なHUD技術によって、ドライバーは道路に目を向け続けながら、道路上の物体とのリアルタイムの相互作用を介して周囲の状況を正確に見抜けるようになる。

 多くの自動車メーカーがAR HUDの利点により多くの関心を向け始めている。そうしたメーカーはさまざまな自動車ラインアップにAR HUDを提供することを検討しており、同技術は数年のうちに自動車の安全運転の基本要件になることが見込まれている。

 既存の従来型HUDシステムでは、速度や回転数など、自動車の走行条件に関する限られた情報だけが提供されていた。表示域も小さいため、実際の走行状況でドライバーの視野を十分に占めるのは難しかった。さらに、ナビゲーション情報は連続して表示される矢印を使って自動車の走行ルートを案内するため、ドライバーが混乱する可能性があった。

 従来型HUDと違って、次世代のHUDシステムではドライバーの視野と相互作用するコンピュータグラフィックが設置されるので、極めて重要な情報が実際の道路の上に直接重ね合わせられる。さらに、それによってドライバーの視野は自然に広がるため、状況認識が向上する。

 上述した以外にAR HUDが提供し得る有用な情報の例は下記の通りだ。

  • 前にいるクルマとの距離
  • 前にいる歩行者の存在と、その歩行者までの距離
  • 目的地までの方向とルート
  • 走行している道路の制限速度

アラート機能の向上に期待

 AR HUDシステムは、ドライバーが直感的に認識できる情報を予測するために、道路環境からの膨大な量のデータをリアルタイムで処理しなければならない。それには、得たデータを迅速に分析し、それを現実世界の物体と正確に統合するための複雑な演算技術が必要になる。そうしたソリューションは、ドライバーに正確な認識という利点をもたらす。つまり、利便性に加え、より安全なドライビングエクスペリエンスがもたらされるということだ。

 こうした技術的なメリットは、ADAS(先進運転支援システム)アラートとの連携でより明確になる。現在、多くのADASアラートは、主にシンボルマークの点滅や音による警告で示されている。この方法では、ドライバーはさまざまなADASアラートの信号を事前に学習し、実際の状況で認識/解釈する必要がある。これは、道路上の危険な状況を回避するために数秒以内に状況認識と判断をしなければならない実世界の走行において、不要な遅延を引き起こす可能性がある。

 AR HUDであれば、ドライバーの視線の先に直接表示することで脅威を識別することが可能となる。また、現実の物体にARグラフィックスを重ねて表示することで、ドライバーは脅威を即座に認識し、道路上の障害物に対してブレーキをかけるなど、適切な行動を素早く取ることができる。このようにしてADASの警告を表示することで、特に夜間や視界の悪い場所でのドライバーの反応速度や状況認識能力が大幅に向上するだろう。

 われわれの運転環境は、より速く、より複雑になってきた。今やAR HUDは、自動車メーカーの技術力やクルマの高級感をアピールするためだけのオプションではなくなっている。クルマや歩行者の増加、そしてわれわれの複雑なライフスタイルによって、ドライバーは道路上のより多くの物体や情報を認識し、より予測不可能な状況に対応しなければならなくなっている。

 AR HUDが強力な機能を発揮するためには、フロントガラス全体に投影する必要がある。ADASの警告や前方の状況に応じたナビゲーション情報をドライバーに完璧に提供するためには、ドライバーの視界全体を占める大きなHUDが必要だ。

 AR HUDは、近い将来、われわれの日常生活の乗り物に欠かせないもの、現在はもちろん、自動運転車が当たり前になる未来においても、ドライバーや歩行者の安全確保に大きく貢献するだろう。


著者情報

本記事は、自動車用ビジョン処理ソフトウェアのサプライヤーであるStradVision CEO(最高経営責任者)のJunhwan Kim氏が執筆した。

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