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電気的特性を調整できるペロブスカイト薄膜次世代半導体の開発の可能性

ペロブスカイトは、オプトエレクトロニクスへの応用に期待できる電子材料としてもてはやされることが多い。2021年11月、材料の研究者らがある進歩について報告した。それによると、ペロブスカイト半導体をベースにした薄膜を作製し、電気的特性を調整できる基板を開発することに成功したという。

» 2021年12月22日 09時30分 公開
[George LeopoldEE Times]

 ペロブスカイトは、オプトエレクトロニクスへの応用に期待できる電子材料としてもてはやされることが多い。2021年11月、材料の研究者らがある進歩について報告した。それによると、ペロブスカイト半導体をベースにした薄膜を作製し、電気的特性を調整できる基板を開発することに成功したという。

 結果として、将来の電子デバイスに用いられるシリコン代替材料の利用が拡大すると研究者らは主張している。

 韓国のGwangju Research Institute of Science and Technologyの研究者らは、今回作製した薄膜について、酸化膜やチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)を成長させるためによく用いられる基板をベースとしていると説明した。ペロブスカイト構造には、誘電率が高いという特徴がある。

Gwangju Research Institute of Science and Technologyの発表内容[クリックで拡大] 出所:Gwangju Research Institute of Science and Technology

 研究者らは、ドーパントの干渉を受けずに基板表面の変化を観察できたという。主席研究員のBongjin Simon Mun氏は「ヘテロ構造の電気的特性を決定するには、基板の欠陥状態を正しく解釈することが不可欠だ。ドーパントの存在はそのような解釈を妨げる可能性がある」と説明する。

 結果的に、研究者らは「SrTiO3基板の偏りのない特性」を測定することができた。

 Gwangjuの研究者らは、雰囲気下X線光電子分光法と低速電子線回折を用いて、製造技術がどのようにSrTiO3に影響をもたらすかを判断した。非ドープの表面への影響を検証するとともに、結果として得たヘテロ構造の界面層にも目を向けた。

 Mun氏は「われわれの取り組みによって、表面領域に近い電子の数を調整することで、デバイスの電気的特性をどのように調整できるかが明確に示された。これは、将来の電子デバイスが原子レベルの材料特性評価によって実現できることを示唆する、極めて基本的かつ重要な結果である」と述べた。

 研究者らは、「Journal of Materials Chemistry C」で発表された研究論文の中で、「われわれの発見は、基板表面の電子構造が酸化物の複雑なヘテロ構造の特性に対して他のパラメータよりも大きな影響を及ぼすこと示唆している」と述べている。

 Mun氏は「長い目で見れば、われわれのSrTiO3に関する研究は、高度な電子デバイスの強固な基盤を構築するだろう」と主張した。

 ペロブスカイトをベースとするデバイスには、同材料とシリコンを組み合わせた光電池の他、単一接合または多接合の光電池、量子ドットの色変換や強化に用いられる新たな発光ダイオードや薄膜などがある。

 市場調査を手掛けるIDTechXは、新興の電子材料に関する最近の調査の中で、「革新的な有機半導体には、複数の用途にわたり広範な機会がある」と述べた。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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