神戸大学や物質・材料研究機構(NIMS)らの研究チームは、ハロゲン混合型ペロブスカイトに光を照射すると、結晶構造が局所的にひずみ、これによって発光波長が大きく変化することを突き止めた。サブÅレベルのわずかな構造変化は、結晶表面の格子欠陥を高分子材料で被覆し、不活性化すれば抑制できることも分かった。
神戸大学分子フォトサイエンス研究センターの立川貴士准教授のグループと、物質・材料研究機構(NIMS)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の冨中悟史主幹研究員を中心とする研究チームは2021年10月、ハロゲン混合型ペロブスカイトに光を照射すると、結晶構造が局所的にひずみ、これによって発光波長が大きく変化することを突き止めた。サブÅレベルのわずかな構造変化は、結晶表面の格子欠陥を高分子材料で被覆し、不活性化すれば抑制できることも分かった。
有機物と無機物のイオンからなる有機無機ペロブスカイトは、効率の高い太陽電池材料として注目されている。ハロゲン化物イオンの種類や組成を変えると、発光色を調整することができる。一方、CH3NH3PbBr1.5I1.5などのハロゲン混合型ペロブスカイトは、光を照射することによって、ハロゲン化物イオンの空間分布が変化する「光誘起相分離」が生じ、発光波長が変化すると考えられている。
研究グループは今回、CH3NH3PbBr1.5I1.5に光を照射し、各ナノ結晶が発光する状況を蛍光顕微鏡で観測した。この結果、光を照射すると長波長側に新たな発光ピークが出現することが分かった。
そこで、ペロブスカイト結晶内部でどのような構造変化が生じているかを調べるため、大型放射光施設「SPring-8」のBL08Wにおける高輝度放射光を用い、X線全散乱測定を行った。そこから、光を照射してもハロゲン化物イオン(Br-とI-)の位置は大きく入れ替わらず、発光特性の変化は相分離によるものではないことが判明した。
さらに詳細な解析を行った結果、Pb2+イオンとハロゲン化物イオンからなる八面体ユニットが、光照射によってわずかにひずみ、結晶構造の対称性が変化していることが分かった。第一原理電子状態計算からも、対称性の破れを伴う原子配置の変化が、発光の長波長化を引き起こしていることが明らかになった。
観測した局所的な構造変化は、光誘起相分離の初期過程とみられ、結晶中の格子欠陥によっても促進されるという。そこで、結晶表面を高分子材料で被覆して不活性化したところ、発光変化を抑制できることが分かった。
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