量子コンピュータ構築における最大の課題は、エラーレートを下げることだ。
量子ビットの構築にはいくつかの方法があるが、IonQのトラップされたイオンは、低エラーレートと、量子ビット間の高い接続性を実現している。同社の量子プロセッサは、3次元空間内の原子を動力源とし、レーザー光で制御することで安定性を確保している。
量子プロセッサの性能と能力を評価するためのベンチマークとして、量子ビット数が最も適切であると考えられるようになってきた。しかし、量子ビット数が増え続ける中で、より正確で信頼性の高い指標が必要とされている。実際、少数の高品質な量子ビットは、多数の低品質な量子ビットよりも処理能力が高く、特にエラーレートが低い場合はその傾向が顕著なのだ。
ソリッドステートシステム内の量子ビットはユニークで、非常にノイズが多く、ほぼ隔離した状態で動作させる必要がある。そこでIonQは、レーザーを適切に調整すれば原子を安定化させることができる、レーザー冷却方式を採用した。これは、冷却装置や高度な装置を必要とせず、レーザー光線だけで冷却できることも大きな特徴だ。
Chapman氏は、「われわれは、レーザーをいくつかの異なる方法で活用している。レーザーは、システムを室温で動作させるだけでなく、システムをカスタマイズし、顧客ニーズに合わせてアーキテクチャを変更することも可能にする。われわれのレーザー制御ソフトウェアは順応性があり、オン/オフが可能だ。これが物理的な金属線だったならオン/オフの操作はできない」と語った。
今回発表されたパートナーシップは、年間56万台のEVを販売し、バッテリーEV(BEV)を12モデル以上導入するというHyundaiの戦略にとって重要なものだ。また、EVは世界的な持続可能性目標を達成する上で重要な役割を果たすため、この提携は気候変動への取り組みに新たな一歩を踏み出すことも意味する。
持続可能な社会を実現するためには、交通機関の電化に加え、自動車製造のエネルギー需要を補うため、EVの長寿命化といった施策が必須だ。
EVの駆動源であるリチウムイオン電池は、コバルトやレアアースなどの原材料を使用しており、その採掘は環境に深刻な影響を与える可能性がある。
IonQは、電池の効率やエネルギー網の容量向上などの問題の多くを量子技術で解決できるとしている。同社のコンピュータは、これまでにも、肥料製造に見られるような大きな分子のシミュレーションを実証している。
Chapman氏は、「IonQのハードウェアとアルゴリズムが成熟すれば、より複雑な分子や反応のシミュレーションが可能になる。今回は酸化リチウムから始めたが、将来的には、固体電池やより優れた太陽電池によるエネルギー生産などにも視野を広げていきたい」と語った。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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