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アナログAIチップのRain Neuromorphics、2500万ドル調達製品開発促進とスタッフ拡充に

本格的なアナログAI(人工知能)チップの開発に取り組む新興企業Rain Neuromorphicsは、シリーズAの投資ラウンドで2500万米ドルを調達した。この資金は製品開発の他、エンジニアならびにサポートスタッフを3倍にすることに投じられる予定だ。

» 2022年02月15日 09時30分 公開
[Sally Ward-FoxtonEE Times]

 本格的なアナログAI(人工知能)チップの開発に取り組む新興企業Rain Neuromorphicsは、シリーズAの投資ラウンドで2500万米ドルを調達した。この資金は製品開発の他、エンジニアならびにサポートスタッフを3倍にすることに投じられる予定だ。

 今回の投資ラウンドは、Prosperity 7 Venturesが既存の投資家(Buckley Ventures、Gaingels、Loup Ventures、Metaplanet、Pioneer Fundなど)と共に主導したものである。支援者にはエンジェル投資家でOpenAIの設立者兼CEO(最高経営責任者)であるSam Altman氏、エンジニアとしてFacebookの設立に携わったJeff Rothschild氏も含まれる。Altman氏は2018年にRain Neuromorphicsのシードラウンドを率いた人物である。

Rain Neuromorphicsのニューロモーフィックプロセシングユニットの上層部。垂直のビット行列が「軸索」としての役割を果たす。また、ReRAMデバイスは列とランダムに連結された樹状突起の間の接点に置かれている[クリックで拡大] 出所:Rain Neuromorphics

 Rain Neuromorphicsのニューラルプロセシングユニット(NPU)は、新しい学習アルゴリズム「Equilibrium Propagation」と新たなアナログチップアーキテクチャを組み合わせたものである。この組み合わせにより、処理を加速させながら、既存のAIシステムに比べ電力消費を1000分の1も削減することができると同社は主張する。現在、アナログ計算は一部のPIM(Processor in Memory)チップに用いられているが、そうした手法ではネットワーク層同士の間にエネルギーを大量に消費するADCやDACが必要になる。また、現行の形式に基づくアナログ計算は、学習に幅広く用いられているアルゴリズムである誤差逆伝搬(バックプロパゲーション)と互換性がない。

 Rain NeuromorphicsのNPUでは、メモリスタ要素として抵抗変化型メモリ(ReRAM)を用いた上で、それを3D製造技術ならびにNAND型フラッシュメモリ技術から転用した垂直のビット行列と組み合わせる。そうした手法により、Rain Neuromorphicsは脳細胞の構造をモデルにしたチップを開発できるようになった。メモリスタ素材でコーティングされた垂直のビット行列は軸索に似ており、下部にあるCMOS層はニューロンに相当する。軸索とニューロンの間にあるランダムに構成されたスパースの接続は樹状突起に類似している。

 各層にある樹状突起が列と接触する点はシナプスと考えることができる。

 同社が2022年初めにテープアウトしたNPUテストチップは、180nmのCMOSプロセスで構築されており、1万個のニューロンを備えている。このチップは実証された学習ならびに推論能力を既に備えている。

 Rain Neuromorphicの長期的な目標は、クラウドとエッジの両方のAIアプリケーションに最初に用いることができる脳のようなチップを開発することだという。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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