大阪大学は、磁気トンネル接合素子を用い、ひずみ検出感度が普及型の500倍という「フィルム型ひずみゲージ」を開発した。医療やヘルスケア、スポーツ科学、仮想現実といった分野における生体モーションの精密計測が可能となる。
大阪大学産業科学研究所の千葉大地教授らによる研究グループは2022年2月、磁気トンネル接合素子を用い、ひずみ検出感度が普及型の500倍という「フィルム型ひずみゲージ」を開発したと発表した。医療やヘルスケア、スポーツ科学、仮想現実といった分野における生体モーションの精密計測が可能となる。
研究グループは今回、柔らかなプラスチックフィルム(フレキシブル基板)上に、2層の磁性ナノ薄膜で絶縁体のナノ薄膜を挟み込んだ「磁気トンネル接合」を形成した。引っ張り試験機を用いて、プラスチックフィルム上の磁気トンネル接合を引っ張ると、磁気トンネル接合にひずみが加わり、素子抵抗が変化する。
試作したフィルム型ひずみゲージで実験を行うと、ひずみが0.2〜0.4%の範囲で、素子抵抗は200%近く減少したという。ゲージ率は約1000となり、一般的に普及しているフィルム型金属箔(はく)ひずみゲージと比べ、ひずみ検出感度は500倍に相当するという。
フィルム型ひずみゲージの実用化に向けては、いくつかの課題があったという。その1つは、安定した動作を得るために、わずかな磁界を外部より印加する必要があることだ。研究グループは今回、「交換バイアス」という手段を用いて、この課題を解決できることを実証した。
もう1つは「閾(しきい)ひずみの存在」である。研究グループは、閾ひずみのメカニズムと閾ひずみが存在しない条件について、シミュレーションを行い解明した。さらに、ひずみに対する電気抵抗の変化について、線形性を保つための条件も明らかにした。
今回の実験に用いた磁気トンネル接合は、1mm2の6800分の1という極めて小さいサイズである。量産中の固体磁気メモリに用いられている製造技術を応用すれば、さらに小さなひずみゲージを作製することが可能になるという。
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