東北大学と東芝は、サマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発した。従来のネオジムボンド磁石に比べ、レアアースの使用量が半分で済み、同等の磁力を達成した。耐熱性や生産性にも優れており、車載用小型モーターなどの用途に向ける。
東北大学大学院工学研究科の杉本諭教授らと東芝の研究グループは2022年3月、サマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発したと発表した。従来のネオジムボンド磁石に比べ、レアアースの使用量が半分で済み、同等の磁力を達成した。耐熱性や生産性にも優れており、車載用小型モーターなどの用途に向ける。
各種モーターは、高い効率を実現するため、レアアースを用いた磁石が組み込まれている。特に、高磁力を可能にするネオジウムが多く使用されている。一方で、資源リスクにより安定した材料の調達が懸念され、新たな対応が求められている。
研究グループが注目したサマリウムは、レアアースの一種で、ネオジムを採掘する際に副産物として生まれ、余剰資源になっているという。そこで、新エネルギー・産業技術統合開発機構(NEDO)からの委託事業として、サマリウム鉄系合金の磁石化に取り組んだ。
磁石の製造ではまず、サマリウムと鉄に適正な量のコバルト、ニオブ、ホウ素を加えた合金を溶解し、急冷凝固させた。この合金に適切な熱処理を行うことで、鉄濃度が高い化合物結晶の境目に、ニオブとホウ素を濃縮させることに成功した。
従来のネオジム合金では、ネオジムの含有率が13原子%に達するが、サマリウム鉄系合金だと、サマリウムが6原子%しか含まれず、約半分のレアアース使用量で磁石化させることができたという。
また、磁石の最大エネルギー積は室温20℃で98kJ/m3、残留磁束密度は室温20℃で0.82T(テスラ)となった。これらの値はネオジムボンド磁石と同等である。さらに、1℃あたり残留磁束密度の低下率は0.06%と、ネオジム磁石の約半分であり、ネオジムボンド磁石よりも高い耐熱性を示すことが分かった。
東北大学と東芝は今後、磁石メーカーと連携しながら、低コストで安定した生産を可能にする製造技術の開発に取り組む。同時に、残留磁束密度や保磁力など磁石性能のさらなる向上を目指す計画である。
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