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» 2022年03月16日 11時30分 公開

電磁波で電力を伝送するという夢の始まり(後編)福田昭のデバイス通信(351) imecが語るワイヤレス電力伝送技術(5)(1/2 ページ)

後編では、電磁波の発見によって信号伝送(無線通信)と電力伝送が考案され、試みられていった歴史を簡単に説明する。

[福田昭,EE Times Japan]

 (ご注意)今回は前編の続きです。まず前編を読まれることを推奨します。



電磁波の実証から無線通信の実験へ

 ワイヤレス電力伝送のルーツをたどる前後編の後編をお届けする。前編では、ワイヤレス電力伝送の基礎となる2つの原理が19世紀に発見されたことを述べた。1つは「電磁誘導」現象で、1830年前後に発見された。もう1つは「電磁波」の存在で、1864年に理論的に存在が予想され、1886年〜1888年に実験的に存在が確かめられた。

 後編では、電磁波の発見によって信号伝送(無線通信)と電力伝送が考案され、試みられていった歴史を簡単に説明する。

ワイヤレス電力伝送の基礎を作った主な業績。筆者の調べによる(Visser氏の講演スライドではない)[クリックで拡大]

 電磁波の存在がヘルツによって実証されたことから、「電磁波による通信(無線通信)」というアイデアが生まれた。1890年頃、有線ケーブルによる通信は既に商業化されていた。電磁波の応用として有線ケーブルを必要としない通信が構想され、数多くの発明家や研究者などが実験に取り組むこととなった。

 無線通信にとって幸いだったのは、画期的な受信素子「コヒーラ検波器」が1894年に発明されたことだろう。発明者は英国のオリバー・ロッジ(Sir Oliver Joseph Lodge, 1851年6月12日生〜1940年8月22日没)である。コヒーラ検波器の初期状態は電気抵抗が非常に高く、絶縁体に近い。電磁波を受信すると電気抵抗が大幅に減少してほぼ短絡状態となり、その状態を維持する。機械的な振動または衝撃を与えると、コヒーラ検波器は初期状態(絶縁体)に戻る。

 「コヒーラ検波器」は利便性に極めて優れていたことから、世界各地で無線の実験に使われるとともに改良が施された。無線通信システムが実用化した後も、コヒーラ検波器の改良品が標準的に採用された。

 無線通信システムの開発者として知られるイタリアのグリエルモ・マルコーニ(Guglielmo Marconi, 1874年4月25日生〜1937年7月20日没)は1895年に、約1.5kmの長距離無線通信実験に成功する。マルコーニは1900年4月25日に船舶用海上無線通信システムの開発企業「Marconi International Marine Communication Co. Ltd.(マルコーニ国際海洋通信会社)」を設立し、成功を収める。

マルコーニの肖像(左上)と無線通信の実験装置(左下)、無線通信の実験回路図(右)[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)
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