結晶対称性を反映した新原理の超伝導整流現象を発見:微視的な機構も明らかに
東京大学の研究グループは、埼玉大学や東京工業大学のグループと共同で、空間反転対称性の破れた超伝導体「PbTaSe2」において、外部磁場がなくても巨大な整流特性を示すことを発見し、その微視的な機構を明らかにした。
東京大学の研究グループは2022年3月、埼玉大学や東京工業大学のグループと共同で、空間反転対称性の破れた超伝導体「PbTaSe2」において、外部磁場がなくても巨大な整流特性を示すことを発見し、その微視的な機構を明らかにした。
空間反転対称性の破れた物質は、電流の正負によって電気抵抗が異なる整流特性が期待されている。特に近年は、いくつかの空間反転対称性の破れた超伝導体において、超伝導相で物質固有の整流現象が報告されており、超伝導ダイオードへの応用などが注目されている。
研究グループは今回、PbTaSe2について「常伝導状態」と「超伝導状態」の両方において、外部磁場を必要としない整流特性を初めて観測することに成功した。これにより、整流特性が結晶対称性を反映していることや、整流効果は常伝導状態より超伝導状態の方が大きく増大することが分かった。
上図はPbTaSe2の結晶構造の模式図と3回回転対称性を有する物質での整流現象の模式図。下図はPbTaSe2における超伝導転移および、超伝導状態と常伝導状態における整流特性 出所:東京大学他
さらに、3回回転対称性を持った超伝導体中でのボルテックス−アンチボルテックスの運動を定式化し、その運動の非対称性が超伝導整流特性を生み出すという、超伝導ダイオードの新たな原理を提案した。
これらの研究成果により、整流現象は超伝導ボルテックスの詳細なダイナミクスを反映した輸送現象であり、空間反転対称性の破れた超伝導体の励起状態やボルテックスダイナミクスを理解する重要な手がかりになることが明らかとなった。
今回の成果は、東京大学大学院工学系研究科の板橋勇輝大学院生、同研究科物理工学専攻の井手上敏也助教、岩佐義宏教授(理化学研究所創発物性科学研究センター創発デバイス研究チームのチームリーダーを兼任)らによる研究グループと、埼玉大学や東京工業大学の共同研究によるものである。
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