Broadcomは2022年4月、Wi-Fi 7ポートフォリオの一環として、住宅/エンタープライズのアクセスポイントとスマートフォンを対象とする5つのチップを発表した。
Broadcomは2022年4月、Wi-Fi 7ポートフォリオの一環として、住宅/エンタープライズのアクセスポイントとスマートフォンを対象とする5つのチップを発表した。具体的には住宅向けの「BCM67263」「BCM6726」、エンタープライズ向けの「BCM43740」「BCM43720」および、スマートフォン(クライアントデバイス)向けの「BCM4398」となる。通信速度は最大11.5Gビット/秒。
Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)は、Wi-Fi 6およびWi-Fi 6Eの帯域幅を2倍にし、世界各国で承認が進んでいる6GHz帯のWi-Fiスペクトラムを拡張、補完する技術である。Wi-Fi 7は理論上、最大2.4倍のスループットと遅延の低減、通信範囲の拡張、はるかに高い信頼性を実現できる。これにより、16Kビデオストリーミングやリアルタイムコラボレーション、ワイヤレスゲーム、没入型AR/VR(拡張現実/仮想現実などの新しいアプリケーションを強化する。
この新しい規格は、320MHzチャネル幅の導入によってWi-Fiチャネルの帯域幅を倍増する。Wi-Fi 7は、近く開始される自動周波数調整(AFC)と組み合わせることで、最適なスペクトルを割り当てて高出力アクセスポイントを実現し、屋内と屋外の両方の環境で6GHzの送信範囲を拡張する。
Wi-Fi 7の特長は、高度なマルチリンク操作(MLO:Multi-Link Operation)にある。MLOは、デバイスによるチャネルの集約や、チャネルの迅速な切り替えを可能にするため、高密度で輻輳(ふくそう)したネットワークに最適である。MLOによって、商用グレードのネットワークのサービス品質を保証し、Wi-Fiを産業用およびIoTアプリケーション向けのタイムセンシティブなネットワーク技術として利用できるようになる。Broadcomの新しいチップは、5品種ともMLO機能に対応している。
Broadcomのワイヤレス通信および接続部門のマーケティング担当バイスプレジデントを務めるVijay Nagarajan氏は、「Wi-Fi 7はMLO機能を導入して、単なる理論速度を上回る速度を実現する。MLOは、ワイヤレスデータにとって、運転時の『Googleマップ』のようなものだ。私は仕事から帰宅するとき、Googleマップでさまざまなルートオプションを徹底的に確認し、最速のルート(通常は交通量が最も少ないルート)を選択する。このルートは毎日同じではない。このプロセスの効果は、平均してより早く家に着くことができ、交通渋滞に悩まされないことだ」と説明する。
「MLOはこれと同様に、ワイヤレスデータのために輻輳の少ないチャネルを選択する。これによって、遅延をミリ秒以下に抑え、データの決定性を向上させる。つまり、データの割合が高いほど、旧世代のWi-Fiと比べて遅延をはるかに低く抑えられる。より高密度で輻輳したネットワークMLOでは、デバイスの負荷が複数のチャネルに分散され、各デバイスが輻輳に対して最適化されるため、同時に大容量化が促進される。その結果、Wi-Fi 7の輻輳したネットワークのスループットは、Wi-Fi 6と比較して5倍に向上する」(Nagarajan氏)
ネットワーク内のデバイス間でマルチギガビットの速度を必要とするハイパーコネクテッドスマートホーム/企業に移行しているため、MLOは遅延と容量に焦点を合わせているのだ。
米国の市場調査会社であるIDCでリサーチディレクターを務めるPhil Solis氏は、「Wi-Fiの決定論的性能を大きく向上させるのは、より高いデータレートや低遅延、優れたネットワーク容量だけでなく、3つの帯域(2.4/5/6GHz帯)にわたるWi-Fi 7のスペクトルの柔軟性と、広帯域の6GHz帯の重視、MLOのような新しい技術である。これは、さまざまな種類の製品、特に消費者と企業の両方の環境において多種多様なアプリケーションで大量のデータを頻繁に使用するスマートフォンのようなプライマリーデバイスにとって価値がある」と述べている。
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