半導体の国際コンソーシアム(企業連合)であるISMCが、インド南西部のカルナータカ州に国内初となる半導体工場を建設すると発表した。これを受け、インド政府が準備を進めている。
半導体の国際コンソーシアム(企業連合)であるISMCが、インド南西部のカルナータカ州に国内初となる半導体工場を建設すると発表した。これを受け、インド政府が準備を進めている。
インドの資金運用会社であるNext Orbit Ventures Fund が、このプロジェクトの推進役を担う。同社が発表した資料によると、今回のプロジェクトでは、約30億米ドルの資金を投じて、65nmプロセスのアナログチップ工場を建設する予定だという。また、イスラエルのTower Semiconductorが、技術プロバイダーとなるようだ。
Tower Semiconductorの広報担当者であるShahar Orit氏は、米国EE Timesのインタビューの中で、「このプロジェクトの実行時には、当社が唯一のインテグレーターであり技術パートナーとなるだろう」と述べている。同氏は、Tower Semiconductorが近々Intelによって買収される予定であることを理由に、詳細については明かさなかった。またIntelも、Tower Semiconductorの買収についてはまだ正式な承認前であるとして、コメントを避けている。
ISMCは、「Indian Semiconductor Mission(ISM)」の一環として、コチャナハリ(Kochanahalli)の工業地域に150エーカーの土地を確保することを要請したという。現在、インド政府による承認を待っているところだ。適用されるプロセス技術の種類に応じて、インド政府が工場建設プロジェクトの費用全体の約半分を負担する予定だという。
現在、米国や欧州、日本など世界中の国々が、低迷する自国の半導体産業を再構築するための計画を実行しているが、インドもそれと同様に、国内の半導体産業の構築を目指している。半導体不足の発生によって、自動車メーカーや半導体装置サプライヤーなどのさまざまな企業が、数十億米ドル規模の損失を被った。
Bloombergの報道によると、インド政府はこれまで、IntelやGlobalFoundries、TSMCとの間で、インド国内にハイテク工場を建設する計画について話し合いを進めてきたという。
インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相は2021年に、国内にフラットパネルディスプレイメーカーや半導体メーカーの工場建設を誘致すべく、100億米ドルの奨励策を発表した。中国に代わり、世界のエレクトロニクス工場としての座を獲得したい考えだ。
インド国内で半導体製造の実現を目指しているのは、ISMCのプロジェクトだけではない。報道によれば、オイル/ガス/金属工業グループであるVedantaが、台湾Foxconnとの間で契約を締結し、約100億米ドルを投じることによって、早ければ2025年にも半導体製造を開始する予定だという。
エレクトロニクス製造の中国離れが進む中、新たな製造拠点として、インドの評価が高まってきている。Reuters(ロイター通信)によれば、Appleは、中国サプライチェーンへの依存度を下げるべく、インド国内で「iPhone 13」の製造を開始したところだ。Appleの製造請負パートナーであるFoxconnが現在、タミルナードゥ州のスリペルブデュール(Sriperumbudur)においてスマートフォンを組み立てているという。
これまでインドには、主に設計に重点を置く国内外の半導体メーカーが投資してきた。Continental Design Indiaはインド唯一のチップメーカーで、トランジスタ、ダイオード、整流器といったディスクリートデバイスを提供している。
インドが半導体製造で国際的な競争力をつけるには、半導体材料や製造装置のサプライヤーで構成されるエコシステムを構築する必要があるが、それには数十年かかるともいわれる。
中国政府は20年以上も前に半導体を基幹産業と位置付けたが、今のところ大きな成功を収めているとは言い難い。2015年に発表された「中国製造2025」では、2025年までに中国のチップ生産量を、国内需要の70%まで引き上げるとされている。ただ、米国政府が主要な生産技術の中国への輸出を制限していることもあり、現在の生産量は20%未満にとどまっている状態だ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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