表1は、上段が2022年1月発売のRadeon RX 6500 XT、下段が2021年10月発売のRadeon RX 6600である。おのおののシリコンに搭載されるコア数は2倍の差があり、またメモリインタフェース数などもほぼ2倍の差となっている。一番大きな違いは、Radeon RX 6600が7nmプロセスで製造されるのに対して、Radeon RX 6500 XTは6nmとより微細な製造プロセスを用いていることにある。弊社が間もなく入手するIntelのGPU「Arc Aシリーズ」も6nmなので、Radeon RX 6500 XTとの比較を行う予定である。
2021年から2022年にかけてプロセッサ(モバイルもHPCも)ではミドルとエントリーが6nm、ハイエンドが4nmに移行しており、AMDはエントリーモデルに真っ先に6nmを用いたわけである。今後ハイエンドは新アーキテクチャに移行していくので、2022年後半から2023年、2024年にかけてCPUでは「Zen 4」、GPUでは「RDNA 3」などがリリースされ、5nmや4nmが活用されていく。
図2は、7nmプロセスで製造されるミドル向けのRadeon RX 6600と、6nmプロセスで製造されるRadeon RX 6500 XTの関係である。表1の仕様の通り、Radeon RX 6500 XTは、Radeon RX 6600をほぼ完全にカットダウンした構造になっている。シリコンの上半分を切り出して、一部インタフェースを置き換えているだけだ。
AppleのM1 Ultraが「M1 Max」を2個並べて、インターポーザーで接続しているのに対して、AMDではミドルのシリコン(実際には設計データ)を半分にカットし、エントリーを作り出している。設計データをそのまま活用するので、カットそのものは秒で終わるだろう。その後、データの検証を行い、マスクを作り、製造してRadeon RX 6500 XTは生まれたわけだ。
6nmは7nmの派生プロセスである。半導体プロセスはフルノードとハーフノードを繰り返している。フルノード(新規プロセス)の開発には膨大な手間と費用がかかるが、フルノードの歩留まりや特性が安定してくると、サイズを数パーセントから10%ほどシュリンクしたハーフノードを作り*)、シリコン面積を小さくすることでウエハーからのチップ取得数を増やし、コストダウンを図る。エントリー向けGPUであるRadeon RX 6500 XTはさらにコストダウンを行えるように、6nmプロセスを用い、図2のようにシリコンサイズを7nmプロセスよりも小さくしているのだ。
*)ゲートだけをシュリンクする場合も多い。例としては、MediaTekの「Dimensity 1000」(7nm)→「Dimensity 1200(6nm)」がある。これら2つのチップはシリコン面積が同じ。
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