AMDは、ロボティクスやFAシステムに向けたロボティクス・スターターキット「Kria KR260」を発表した。既存の適応型SOMと組み合わせて用いれば、ロボットなどの開発効率を高めることができ、機器導入までの期間を従来に比べ最大9カ月も短縮することが可能になるという。
AMDは2022年5月17日、ロボティクスやFAシステムに向けたロボティクス・スターターキット「Kria(クリア) KR260」を発表した。既存の適応型SOM(System On Module)と組み合わせて用いれば、ロボットなどの開発効率を高めることができ、機器導入までの期間を従来に比べ最大9カ月も短縮することが可能になるという。
AMDは2022年2月にXilinxの買収を完了した。これによって旧Xilinxは、AMDの「Adaptive Embedded Computing Group(AECG)」として、FPGAなどの事業を展開している。こうした中で同社が注力しているのが、高い性能と低遅延を実現しつつ、ロボットや産業機器、医療機器などの開発期間を大幅に短縮できるソリューションの提供である。
2021年4月には、スマートシティーなどに向けたビジョンAIシステムを短期間で開発し、検証するためのビジョンAIスターターキット「Kria KV260」や「Kria K26 SOM」を市場に投入してきた。今回は、このKriaポートフォリオに、ロボティクスやFAシステム向けのスターターキットを追加した。
AMDのAECGでマーケティング戦略マネジャーを務めるKV Thanjavur Bhaaskar(KVタンジャーブル・バスカー)氏は、産業用や医療用などのロボットに求められる要件として、「柔軟性」「自動化」「IIoT(産業用IoT)とAIoT(AI+IoT)への対応」そして、「IoTのHubとして機能する接続性」を挙げた。ロボットはこれまで、用途に応じて異なる設計が行われてきたという。しかし、共通する性能や機能もあると指摘する。それは、高い演算性能や低遅延、安全性/セキュリティなどの項目である。
こうした要求に対応できる開発プラットフォームとして、AMDが用意したのは電源効率の高いアダプティブコンピューティングである。Kria KR260は、ロボット開発用統合ソフトウェアプラットフォーム「ROS 2」をネイティブにサポートする。また、Kria SOMはロボットや産業システム用のインタフェースを備えている。これによって、ハードウェアアクセラレーション技術を用いたロボット開発を迅速に行うことができるという。
さらに、Kria SOMを用いてロボットの開発期間を短縮するために用意したのが、ロボットライブラリーとユーティリティーの統合セット「Kria Robotics Stack(KRS)」である。KRSやROS 2を搭載したKria SOMは、GPUを用いた競合のシステムに比べ、ワット当たりの性能は8倍以上となり、最大3.5倍の低遅延を実現することができるという。
Kria KR260は、組み込みOS「Ubuntu」にも対応している。Canonicalが提供する最新の長期サポート(LTS)バージョンである「Ubuntu Linux Desktop(22.04)」や、「ROS 2 Humble Hawksbill」との互換性がある。さらにAMDは、Open Roboticsと協力し、ロボティクスコミュニティー向けにROS 2実装の検証などを行うことにしている。
Kria KR260の価格は349米ドルで、AMDおよび、世界の同社販売代理店から購入することができる。
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