日立金属は、コバルト(Co)の含有量を大幅に減らしてもリチウムイオン電池(LIB)の長寿命化と高容量化を両立させることができる「正極材技術」を開発した。この材料を用いると、Co原料に由来する温室効果ガス(GHG)の排出量を削減できるという。
日立金属は2022年5月、コバルト(Co)の含有量を大幅に減らしてもリチウムイオン電池(LIB)の長寿命化と高容量化を両立させることができる「正極材技術」を開発したと発表した。この材料を用いると、Co原料に由来する温室効果ガス(GHG)の排出量を削減できるという。
LIBは、EV(電気自動車)などの普及により、需要が急速に拡大する。一方で、一回の満充電で走行できる距離などが課題となっている。これを実現するためにはLIBのさらなる高容量化や長寿命化が必要で、そのカギを握るのが正極材といわれている。ところが、正極材の主要成分として用いられてきたCoは、GHG排出量が極めて多く、その対策が求められていた。
日立金属が新たに開発したLIB用正極材は、粉末冶金技術を駆使した独自の固相反応法を用いて合成した。その特長は2つある。「組織制御により高容量化と長寿命化を両立させた」ことと、「原材料の選択肢が増加した」ことである。
組織制御技術によって、充放電サイクルに伴う結晶構造の劣化を抑制した。これによってニッケル(Ni)の含有量を90%(従来は約80%)まで高めて高容量化しても、電池寿命を維持することができるという。しかも、結晶構造を安定化させる特性があることから、Coの含有率を従来に比べ80%も削減できることが分かった。
さらに、正極材の製法として今回は、水溶性物質以外を利用できる固相反応法を用いた。これによって出発原料の選択肢が増え、原材料由来のGHG排出量を削減することが可能となった。
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