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NIMSら、多孔性で極薄の炭素ナノシートを合成燃料電池や二次電池に応用

物質・材料研究機構(NIMS)と早稲田大学らによる国際共同研究チームは、有機金属構造体(MOF)と呼ばれる物質を新たな手法で剥がし、その後に炭素化することで「多孔性炭素ナノシート」を合成することに成功した。燃料電池や二次電池への応用が期待できるという。

» 2022年06月07日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

表面には多くの細孔が存在、電極化しても多くの触媒活性部位を保持

 物質・材料研究機構(NIMS)と早稲田大学、クイーンズランド大学、華東師範大学、南京航空航天大学などの国際共同研究チームは2022年6月、有機金属構造体(MOF)と呼ばれる物質を新たな手法で剥がし、その後に炭素化することで「多孔性炭素ナノシート」を合成することに成功したと発表した。燃料電池や二次電池への応用が期待できるという。

 有機配位子と金属イオンの配位結合からなるMOF(別名:多孔性配位高分子=PCP)は、ガス吸着や分離、分子認識などの用途に適している。ところが、一般的な無孔質の二次元ナノシートを再積層すると比表面積が極めて小さくなる。このため、電極触媒やキャパシター、二次電池、燃料電池といった用途に向けては、再積層しても多くの触媒活性部位を保持できるよう、多孔性物質にする必要があったという。

 研究チームは今回、MOFがナノシート状に剥がせることに着目。そして、剥がしたMOFナノシートを炭素化し、新材料を合成した。その後、触媒サイトを付け加えて酸性下での酸素還元反応用電極触媒を作製した。

多孔性炭素ナノシートの合成プロセス 出所:NIMS

 合成した多孔性炭素ナノシートは、厚みが1.5nmと極めて薄い二次元シートである。その表面には無数の細孔が存在し、シート中を貫通している。細孔径はマイクロ細孔領域からメソ細孔領域5nm程度まで分布している。しかも、MOFを剥がす条件や炭化条件などを変えれば、ある程度の調節が可能になるという。

 シート内の細孔表面を異なる分子で修飾することも可能である。例えば、MOFに含まれる窒素(N)原子を残し、窒素ドープをされた多孔性炭素ナノシートを合成した後に、細孔内を鉄(Fe)原子で修飾すれば、多くのFe-N4活性サイトを、凝集することなく均一かつ高密度に形成することができるという。これは、燃料電池において、酸性下での酸素還元反応(ORR)活性を高める重要な技術になる。

 研究チームは、酸性条件において酸素還元反応を調査した。この結果、half-wavepotentialは0.83V vs.RHEになった。これは、開発済みの炭素電極と比べ、最も良好な値だという。H2/O2燃料電池による実験では、634mWcm−2という高い値を確認した。論文では、第一原理計算を用いて、同定されたFe-N4活性部位と細孔径分布分析に基づき解明した反応メカニズムも紹介しているという。

左上段はMOF前駆体の電子顕微鏡像。それ以外は生成物の電子顕微鏡像 出所:NIMS

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