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整流回路の出力を所望の電源電圧に変換するコンバーターの原理福田昭のデバイス通信(366) imecが語るワイヤレス電力伝送技術(20)(1/2 ページ)

今回は、レクテナの後段に位置する直流コンバータ(昇圧と降圧)について解説する。

» 2022年06月07日 11時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

 (ご注意)今回は前回の続きとなっています。まず前回の内容を読まれることを推奨します。



整流回路が出力する電圧を最適な値に変換する

 前回までは、ダイオードを使った整流回路を解析する4つの手法を4回にわたって説明してきた。今回はいったん、ワイヤレス電力伝送システムの受信側回路に戻ろう。アンテナと整流回路で構成する「レクテナ(Rectenna:rectifying antenna)」の後段には、電源電圧(直流電圧)を変換するコンバーターが欠かせない。整流回路の出力電圧は、負荷となる受信側のバッテリーや電子回路などにとって、適しているとは限らないからだ。

マイクロ波(電磁波)で電力を送受信するシステムのブロック図。受信側(受電側)のアンテナとインピーダンス整合回路、整流器を組み合わせた素子が「レクテナ(Rectenna:rectifying antenna)」である[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)
レクテナ(とその関連回路)を解説するサブパートのアウトライン。「6.1 アンテナ」「6.2 整流器」「6.3 直流ブースト変換器(コンバーター)」「6.4 直流バック変換器(コンバーター)」「6.5 結論」で構成する。今回は「6.3 直流ブースト変換器(コンバーター)」と「6.4 直流バック変換器(コンバーター)」を扱う[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)

 整流回路の出力電圧を最適な値に変換するコンバーター(DC-DCコンバーター)は大別すると、入力電圧を昇圧するコンバーター(直流ブーストコンバーター)、入力電圧を降圧するコンバーター(直流バックコンバーター)に分けられる。

スイッチドキャパシタによる昇圧回路

 ブーストコンバーター(昇圧型コンバーター)の代表的な回路は、クロック同期スイッチとコンデンサ(キャパシタ)で構成する「スイッチドキャパシタ(Switched Capacitor)」だろう。スイッチドキャパシタは電源回路だけでなく、可変抵抗回路やフィルタ回路などにも使われる。アナログ回路群を構成する基本回路の1つだ。

 逆相のクロックに同期する2対のスイッチ(スイッチ1とスイッチ2)、それから2個のキャパシタ(キャパシタ1とキャパシタ2)で構成した、下図のようなスイッチドキャパシタ回路を考えよう。

直流ブーストコンバーターの例(スイッチドキャパシタ回路)と基本動作[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)

 スイッチ1が閉じている期間(スイッチ2が開いている期間)は、キャパシタ1が充電される。キャパシタ1の両端の電圧VC1は入力電圧Vinと等しくなる。キャパシタ2は充電されない。出力電圧Voutはゼロになる。

 逆にスイッチ2が閉じている期間(スイッチ1が開いている期間)は、キャパシタ1の電圧は変わらず、キャパシタ2が入力電圧Vinに充電される。出力電圧Voutは入力電圧Vinの2倍に昇圧される。この後、出力電圧は入力電圧の2倍を維持しようとする。

 スイッチドキャパシタは雑音が少なく、電源としての品質は高い。一方で出力電流が小さいという弱点がある。

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