Ayar Labsが初期段階で下した重要な決断の一つに、光チップレットから光源そのものを分離したという点がある(同社は、スタンドアロンの多重波長レーザー光源「SuperNova」を独自開発している)
Wade氏は、「レーザーの物理学は、CMOSマイクロエレクトロニクスの物理学から切り離されているが、それは高温下で動作できないからだ。急激に電力効率が低下し、信頼性も指数関数的に悪化してしまう」と述べる。
熱設計電力(TDP:Thermal Design Power)の高性能演算ノードは、数百ワットの電力を使用するため、SoCパッケージの内部温度が80°C以上に上昇する可能性がある。SoCから光源を分離できれば、離れた場所に配置することで、温度を55°C未満に維持することが可能だ。
Wade氏は、「Intelは2019年、DARPA PIPESプロジェクト(高い拡張性を実現するフォトニクスパッケージ)において光I/Oを提供するために、Ayar Labsを選んだ。プロジェクトでは、Ayar LabsのチップレットをIntelのFPGAと連携させるデモが披露されたが、今や両社のパートナーシップは、FPGAの枠を超えて広がっている」と説明する。
「しかしここで問題となるのは、『Ayar Labsの興味深い技術は、実際にSoCの問題を解決可能な方法で、重要なフルレクチルSoCからミリメートル未満の範囲内で設計や製造、組み立てなどを実現できるのだろうか』、という点だ」(Wade氏)。「DARPA PIPESプロジェクトでの取り組みは、当社の技術と製品アーキテクチャの性能を実際に証明するものだった。それは、大きなターニングポイントとなった」(同氏)
現在、Intelの投資部門であるIntel Capitalは、Ayar Labsの戦略的投資機関となっている。
HPE(Hewlett Packard Enterprise)も、同社のベンチャーキャピタル部門であるHewlett Packard Pathfinderを通じて、Ayar Labsに戦略的投資を行っている。Wade氏は、HPEのインターコネクト技術である「Slingshot」(HPEが2019年に買収したスーパーコンピュータ大手、CrayのHPC[高性能コンピューティング]ファブリック)のロードマップでは今後、光I/Oチップレットが必要になると指摘している。HPEとAyar Labsは、フォトニクスの研究開発で協力し、エコシステムを構築する計画だ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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