2次元の微細化を続けてきたNANDは、2016年頃に3次元化した。その後、メモリ密度を上げるために、各社はひたすら3次元の積層数を増大させている。例えば、Micronは、32層、64層、96層、128層、そしてどこよりも早く176層の生産を開始した(図9)。
さらに、IMW2022が開催される直前の2022年5月13日に、Micronが2022年の後半から232層の3D NANDを生産することが報じられた(図10)。この232層の3D NANDは、116層の2段積みになっている。そして、メモリセルアレイの下部にCMOS回路を形成する、いわゆるCMOS Under Array(CUA)の構造を採用している。
3D NANDのメモリ密度を増大させるために積層数を増やす方法は単純ではあるが、アスペクト比(Aspect Ratio、AR)の高いメモリホールの開口や、その埋め込みなど、課題は山積している。
そこで、Micronは、積層数の増大に頼るだけでなく、メモリセルを平面方向、つまりX-Y方向にスケーリングすることにより、メモリ密度を増大することを提案している。
図11(a)は、メモリセルアレイの平面図である。ピラーと呼ばれる小さな円がアレイスタックを上下に貫通している。ピラーを囲んでいるワードライン(WL)は、ストレージデバイスのゲートとして機能する。つまり、ピラーとWLの交点がストレージデバイスのメモリセルを形成している。このセルが、異なるレベルの閾値電圧(Vt)で、データを2進法で記憶する。
WL間のギャップはスリットと呼ばれており、メモリセルアレイの形成に必要な構造となっている。3D NANDでは、犠牲WL材料の除去とメタルゲートの形成がスリットを介して行われるからだ。
このような構造のメモリセルについて、X-Yスケーリングには二つの方法がある。一つはスリット幅を縮小すること、もう一つはピラーを密に配置することである。この手法を、ピラーピッチスケーリングと呼ぶ。
図11(b)は、スリット間のピラー数を、4ピラー、9ピラー、14ピラー、24ピラーと高密度化した場合のメモリセルの平面図を示している。スリット間のピラー数が14を超えると、スケーリングのメリットが減少し始める。従って、やみくもにピラーピッチスケーリングを行えばよいというわけではないことが分かる。
3D NANDのメモリ密度を増大するには、2つの方法があるわけだ(図12)。一つは、縦方向にメモリセルを積層することである。もう一つは、X-Y方向にメモリセルをスケーリングすることである。
前者では、ARの高い孔の加工や下段と上段の孔合わせなどが年々、困難さを増していく。一方、後者は、縦方向にメモリセルを指数関数的に積層することを緩和してくれる武器になる。
しかし、X-Y方向のスケーリングを続けると、CMOSの微細化を続けることになり、例えば、トランジスタにFinFETを使ったり、微細配線にEUVを適用したりするということにもなりかねない(図13)。これらは、メモリコストの高騰につながるため、安易に採用することはできない。
従って、X-Y方向のスケーリングを行う際には、ビット当たりのCMOS回路を減らす工夫をすることが、FinFETやEUVの使用など、高価なプロセスを回避するために必要になってくる。
以上をまとめると、今後の3D NANDの高密度化には、縦方向への積層化、X-Y方向のスケーリング、ビット当たりのCMOS回路の削減、この3つの手法が重要であると言える。
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